「……っ、ぁ……ゆ、きお」

「…何?」


亜美は何時もとは違って、本当に女の子していた。
その様子に本当にドキッとしてしまう。


「手慣れてるの?」

――は、はは」


不安そうに聞かれた。


「……笑うな、馬鹿」

「だってさ、そんな事言われるとは思ってもみなかった」


亜美だって知ってるだろう?
僕は中学生の時は、誰とも付き合っていなかったんだから。
悲しいかな、ソレは高校生活でもなんら変わりはない。
誇れる事なんだろうか、情けない事なんだろうか…。



我が人生 ―貫徹―



「…なんで、そんな事聞くんだ?」

「だって…上手かったから」

「……」


テイッと亜美の頭を軽く叩いた。


「あ、なんだよ…」

「あまりにも馬鹿な事言うからだよ。僕がモテないのは亜美が一番知ってるだろ?」

「……それは…」


亜美は口ごもって、静かに下を向いた。
うわ、そうだけど…って言われたら、それこそショックだな。


「私が…何時も隣にいたから…」

「え……?」

「幸雄はホントはモテてたんだぞ…同級生の友達とかに紹介しろって何回も言われた」

「ぇ…っと…」


なんだか、無茶苦茶惜しいんだけど。
何だよ、ソレ…僕の耳には一言もそう言うのが入って来ないぞ。


「私が…妨害してたんだよ、悪いか」

「悪い…って、別にいいけどさ」

「だから、高校だと私がいなくなったから…キスの一つや二つしていると思うと嫌で堪らない…」

「…そんな事ないよ。亜美としかしていない」


苦笑しながら、今度はソッと亜美の頭を撫でる。
さっきは、怒ってきたけど今は大人しく撫でられている。


「お前、今の僕は都会者だから手が早いなんて偏見は止めとけよ」

「…ぅん」






それにしても寒い。
やっぱり冬だから、暖房もついていないと風邪をひいてしまいそうだ。
未だに僕は亜美が寝ているベッドの傍に座っている。
たとえ、掛け布団が乱れていても、それがあるかないかじゃ大分違う。


「あの…寒いのか、幸雄?」

「…そりゃ、ね」

「は、入って来いよ」

「馬鹿、本当に襲うぞ」

「ふん、幸雄が俺に勝てると思ってるのか?」


と、少し調子を取り戻したのか、亜美はふんと胸を張って言ってきた。
ったく、調子良い奴だよ。


「うん、勝てるよ」

「な
――

「だってさ…」

「ぇ…ちょっと…」


少し強引にベッドから引き摺りおろして、胡坐をかいて足の間に身体を入れて座り込ませる。
そっと抱きしめながら亜美にキスをする。
目を瞑ってしまう亜美が可愛くて堪らない。


「こう捕まえれば、僕の勝ちだろ?」

「ぅ……ズルイぞ」


と、小さく反論するけれど僕は簡単に受け流す。


「あー、これなら少しは温かいな」

「馬鹿……」


亜美の方もおずおずと僕に抱きついてくる。


「私……こんなに自分がベタベタしたい人間だなんて思わなかった」

「…そう、かな?」

「そうさ…。だって、そうしないと…いけないだろ?」


強くあろうとするには、温もりなんて邪魔だ、と亜美を思い続けている。


「馬鹿……別に抱きしめられたいなら、言ってくれれば何時でもするよ」

「そんなの、出来る訳ないだろ。私は明日帰るんだし、次に会えるのは何時になるか判らないんだから…」

「……」


確かに、ソレはそうだ。
僕が自分の家に戻るのは、何時になるだろう?
今年の冬休み…帰れない事はないが、常に亜美に構っていられる時間はないと思う。


「ゴメン」

「謝るなよ。……今日はさ、思う存分甘えるけど…いいよな?」

「ん…構わないよ」


僕たちの住んでいる場所は違う。
何時か一緒に住める時が来るかもしれないけれど、今じゃない。
今を求めている僕たち…。
今を求めている亜美…。

だから
――
擦り寄ってくる彼女に、精一杯優しくしよう。


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