心踊り出すような生き方を サイド・ストーリー By KEN
「ギャァーー!!」 また肌寒く空気が透き通っている感じのする季節、冬。 一人の少年が絶叫をあげていた。 「ったく、アンタって言う奴は」 その少年の名前は刈川 俊樹。 彼は今、大の字になって倒れている。 頬には真っ赤な紅葉(もみじ)。 「だ、だってよ、祥子・・・」 「だってじゃない!」 赤く腫れた頬をなでながら俊樹は愚痴る。 彼を張り倒した小沢 祥子は般若の表情となり、俊樹を睨み付けている。 あまりにもその視線の威力は強いらしく俊樹はまるでヘビに睨まれたカエル状態だ。 「アンタ、一体全体何しているのよ!もう、浮気はしないって言ったじゃない!」 「だから、浮気じゃないんだよぉ〜!」 「そんなん信じられない!アンタ、その台詞何回言ったぁ!」 俊樹は何故か女子にモテるらしい。 俊樹も悪い顔せずそのまま付き合ってくれと言った女の子と一緒に何処かに行ってしまう事がしばしば。 その行為を何度も続けていれば祥子にとっては堪ったものではないだろう。 以前に何度もそういう事があって、度々俊樹は泣いて謝っていた。 最近はそういう事がなく、俊樹の浮気症も改善されたかと思ったが、甘かったようだ。 「はぁ、アンタにはほとほと愛想が尽きたわ!もう顔も見たくない!」 祥子はそう言い、教室を出て行った。 そう、俊樹と祥子は教室にいたのだ・・・。 大人数の目の前で喧嘩をしていた。 無論、クラスのみんなは唖然としていた。 「はぁ・・・やっぱり祥子は恐いわ」 「則先輩にやられた時より酷い状態だね」 「それにしても刈川君大丈夫かなぁ?」 未幸、亜弥、美奈が三者三様に言う。 「いいの、いいの。馬鹿で女の敵には良い薬だわ」 未幸は手をヒラヒラと振りながら言った。 「広夢〜」 滝のような涙を流しながら広夢に縋り付く俊樹。 広夢は溜息をつきながら一言。 「はぁ、今回は助けないよ・・・」 「そんな事言わずに・・・」 「前回、俺まで酷い目にあっているから嫌だ」 広夢は祥子のように教室から出て行った。 ガックリと肩を落とす俊樹。 「まぁ、気を落としなさんな!前回みたく必死こいて謝れば大丈夫でしょ!」 肩をバンバンと叩きながら未幸は励ます。 「まぁ、浮気を治せばよかったんだろうけど」 「浮気じゃないんだけどな・・・」 「ふ〜ん」 「ただ、男女2:2、友達同士で喫茶店に寄っただけだぞ」 「はぁ、アンタには前科があるんだから。それじゃ、ダブルデートじゃない」 「う・・・」 「なんでその時、小沢 祥子と言うアンタの彼女も連れていかなかったの?」 「う・・・」 「アンタが祥子の独占欲ってのを強くさせたんだからね」 「・・・必死で謝ってきます」 「あいよ、行ってらっしゃい」 トボトボと俊樹は歩いて行った。 何となくだが、悲しいBGMが聞こえなくもない。 「ん〜今回は、祥子の独占欲の強さが原因みたいね」 「そうだね」 教室を出て行く俊樹の背中を見ながら未幸が言った。 私もそれに同意する。 「まぁ、美奈の場合は独占欲強そうだけど、大丈夫そうだからね」 「ん・・・何が大丈夫なの?」 少しキョトンとする私。 「則先輩は美奈にしか心を開いてないだろうし」 「そ、そっかな・・・?」 少し顔が赤くなる私。 実を言うと、未幸の言うとおり。 則和さんは私以外には必要以外な事を話さない。 少し優越感を感じる。 「あ、でも則先輩、最近詠子先輩と話しているの見たよ」 「あぁ・・・そう言えばそうね」 「美奈ちゃん、ライバル登場だね〜」 亜弥ちゃんにそう言われて、少しドキッとした。 「あ・・・う・・・」 「まぁ、大丈夫だって」 昼休みになって、私たち三人組みは二年生のクラスに行く。 今日は食堂で食べようと思っている。 「はい、ここだからね望月君」 「ん・・・悪いな」 則和さんのクラスが見えるところまで来た時。 ドアが開いて則和さんと詠子先輩が出てきた。 二人はどうやら何か話していたようだ。 何やら紙切れを詠子先輩は渡していた。 少し私はそれに気になった。 「あ、則和さん、詠子先輩。お昼食堂行きましょうよ!」 でも、そんな事は心の中ではすぐ消えた。 何ていったってとても些細な事なんだから。 「分かった」 「あぁ、ゴメンね。今日は私、宿題忘れちゃって図書館にいるつもりなのよ」 「そうですか」 「ゴメンね〜」 詠子先輩は図書館の方へ行ってしまった。 「田口や刈川は?」 「あぁ、あの二人は野暮用があるんですよ、則先輩」 「そうか」 だけど、さっきの些細な事は何処かに引っかかっていたのかもしれない。 何となく、違和感を私は感じた。 昼食が終わると、則和さんが午後の授業開始際に私に言った。 「あぁ、今日はちょっと用があるから先に帰ってくれ」 「・・・どうしたんですか?少しなら待ちますよ?」 「ん・・・多分、遅くなる」 「分かりました」 そう言われて私は、今日は一人で帰る事になった。 何となく寂しい。 家に帰り、夕食が終わった後、私は電話の子機を自分の部屋に持って行って、未幸と話した。 則和さんは、何時もより遅い時間に帰ってきた。 『ふ〜ん、美奈がそう感じるなら何かあるんじゃないの?』 「う〜ん・・・」 『詠子先輩と深夜のデートでも約束してるんじゃないの?』 則和さんは家に帰ってからも何となく違った。 うまく言えないけど、そわそわと言うか・・・そんな感じ。 私は心配症だから気になりだしたらしょうがない。 『まぁ、アンタと則先輩は深〜い関係だからねぇ(ニヤリ)』 意地の悪い声が聞こえた。 「で、でもそんな・・・まだ一度しか・・・」 『はいはい、そういう事にしておきましょ』 顔が赤くなるのが分かる。 場の雰囲気とかそんなんでイケナイ事をした私にとって未幸の言葉は少し痛かったりする。 何と言っても誘ったのが私だから、その事を思い出すとホント恥ずかしい。 胸がドキドキと高鳴る。 もしかして、これはトキメキ? そんな風に心の中でおどけたが胸のドキドキはおさまらなかった。 胸のドキドキで何も聞こえないほど、あの時は高鳴っていたと思う。 『はぁ・・・眠いから今日はこれで終わり!』 「・・・うん」 『もう、一緒に住んでるんなら私に相談せずに聞く!』 「・・・うん」 『まぁ、頑張りなさい!』 その言葉を聞き終えると、プツッと言う音が聞こえて未幸との会話は終わった。 少し溜息。 「聞いてみろって言われてもなぁ・・・」 ベッドの上に座っていたので、そのまま後ろに倒れた。 今は天井が見える。 天井を見ながら私はぼ〜っとしていた。 「今日はもう寝ようかな・・・」 そういって、私は寝ようと思った。 寝ないといけないと、思った。 些細な事なのだ、これはと自分の心の中で決め付けた。 チクタクチクタク・・・チクタクチクタク・・・。 眠れない時に聞こえる時計の音って何となく恐く聞こえるのは私だけなのか・・・。 少し手を耳に当てながら私は暗い部屋の中で眠ろうと努力していた。 目を閉じているから、聴覚が敏感になっているのか・・・。 ホントに時計の針の音が鮮明に聞こえた。 「何時もはこんな事ないのに・・・」 前に何度かこんな事があった。 子どもの頃、みんなと一緒に行った恐怖映画。 その夜はホントに寝れなかった。 やっぱり、聴覚が凄くなよくなったような気がして、時計の針の音でさえお化けの叫び声に聞こえたりした。 最近は、今回と同じく則和さん関係の事だった。 前回は、冬休み勝手に自分の故郷に行った時の事だった。 私に言うと、行かないでと言う言葉が出るのが嫌だったみたいだ。 ・・・確かに言いそうだけど・・・黙って行かないで欲しかった。 その日はホントに眠れなかった。 さらに、則和さんを追って行った時まったく眠れなかった。 最近は、則和さんに依存しているかもしれない。 あの人がいないと、安心出来ない・・・。 ギィ・・・。 また、少し時間が経った後、何か物音が聞こえた。 何かが軋んでいると言うかそんな感じの音がした。 ドアが開いた感じの音だった。 「則和さん・・・の部屋?」 私は、ベッドからガバッと起き、そっとドアを開けて則和さんの部屋の方を見た。 廊下の先にはやっぱり則和さんの後ろ姿があった。 トイレかなと思ったが、服装が私服だった。 ジャンバーを着ているから、明らかに外に出る気配だ。 私は、急いで簡単な私服に着替えて、則和さんを追った。 ロングコートを羽織っているが、少し寒かった。 真夜中に自分の家を出たのはほとんど初めてだった。 この時間帯は絶対に寝ている時間帯なのだから、当たり前だ。 私は、静かに則和さんの後を追った。 ・・・なんで、私は声をかけないのだろう? 今すぐ声をかければ、則和さんは戻ってきてくれるだろう。 でも、何でだろう? そんな困惑した私を余所に則和さんはどんどんと街の方へと歩いて行った。 私も追う・・・。 「こんな場所・・・初めて」 則和さんが向かった場所は、日中でも私が訪れないような場所だった。 路地裏と言うのだろうか・・・街灯もなく真っ暗だった。 少し辺りをきょろきょろと見た。 あぁ、ホント真っ暗だ。 明かりがないかな・・・? 恐怖感を感じる。 則和さんについていかなくちゃ・・・。 早くしないと見失っちゃう・・・。 『おい、嬢ちゃん』 「え・・・?」 肩を叩かれた。 野太い声の男の人がいた。 その男の人は、私の恐怖の対象のような人だった。 『何してるんだ?売りでもやってるのか?』 「わ、私は・・・」 嫌な汗をかいている思う。 正面向き合ったら私は、立ちすくんでしまった。 『まぁ、いいけどよ。どっちにしても俺は久しぶりに女を味わいたいからな』 「・・・!」 『来い!』 手首を掴まれた。 凄い力で引き寄せられる。 「や、やめてください・・・」 『馬鹿言うなよ、暗闇だからかわかんねぇけど、おめぇ中々の美人だからな。頂かない訳ねぇじゃねいかよ』 「・・・・・・ヒッ!」 男の人は、そう言うとどんどんと私に迫る。 元々、この路地裏は人気が少ないようで・・・。 私を助けにくる人なんて見当たらなかった。 『へぇ・・・ちっせぇけどいい胸してるじゃないかよ』 大きなゴツゴツとした、手で私の胸を撫でるように揉む。 とても、不快感。 苦痛を感じた。 「・・・や、やめてください」 『だから、やめねぇっての』 嫌な笑顔・・・。 私は、絶望に落ちてしまいく。 「・・・おい、そこでやめておけ」 『・・・ん、誰だぁ?』 「・・・・・・の、則和さん」 則和さんが、助けにきてくれた。 と、言うよりは何か買い物帰りのような感じだった。 「はぁ・・・勿体無いなぁ・・・」 そう言うと、小脇に抱えた紙袋の中から一本のビンを取り出して、思いっきり男の人の頭を殴り付けた。 あまりにも、男の人が隙だらけで、則和さんの的確な攻撃・・・。 男の人は、気絶してしまった。 「・・・はぁ、どうしてこんなとこにいるんだ?」 「だ、だって則和さんが・・・」 「・・・はぁ・・・」 溜息をつかれた。 私は、少し則和に脅えた。 何を言われるか怖かったからだ。 「ほら、帰るぞ」 「は、はい・・・」 則和さんの手をとる。 だけど、うまく立ち上れなかった。 「・・・ほら」 「・・・ごめんなさい」 どうやら私は恐怖で足が立たなくなったようだ。 則和さんは背中を向けてしゃがんだ。 何とか、則和さんにおんぶしてもらって・・・家に帰る・・・。 すっごく、恥ずかしい・・・。 帰り道・・・私達は無言だった。 「あの・・・」 「ん・・・」 必死に喉から声を出す。 だけど、続きが言えなかった。 何処に行っていたかと・・・。 「・・・那珂沢に良い酒屋を紹介してもらったんだ」 「酒屋・・・?」 「そう。たまに寝酒として酒飲むんだ俺」 「・・・・・・いけないんだ」 「・・・たまにだ」 「むぅ・・・」 「じきにお前も飲むようになるさ・・・」 少し笑いながら則和さんはそう言った。 そして、最後に俺が少し早かっただけだと言った。 「詠子先輩が・・・渡した紙切れってそれは・・・」 「あぁ、那珂沢の御用達の酒屋だ」 少し安心した・・・。 少し、恥ずかしかった。 でも浮気・・・じゃないみたいだし・・・。 私のただの空回りだった・・・。 ホントに、私って今日は格好悪い。 「則和さん・・・私、独占欲強いみたい」 未幸達に言われた時はわからなかったけど、今分かった。 ホントに私は一人占めしたいみたいだ。 「知っている・・・」 そういう・・・。 分かっていてくれて嬉しかった。 少し心が温まった。 恐い事があったけど・・・。 私は・・・今日があってよかった・・・。 私と則和さんは、その後無言だけど、温かく家に帰った。 「こういうのって、深夜デートって言うのかな?」 「アホ・・・どう見たって迷子を家まで送っていくくらいにしか見えないだろう」 「うぅ・・・」 でも、少し意地悪な則和さんは健在だった。 あぁ、そう言えば刈川君と小沢さんは仲直りしたかな? 仲直りしているといいなぁ・・・。 Fin 後書き また、中途半端だ・・・。 もっと、改善させないとなぁ・・・。 頑張ります〜。 ちなみに、刈川君と小沢さんは、どうなったかは分かりません(笑 次回書くとしたら誰にしようかな・・・詠子にしようとは思っています。 次回もよかったら読んでくださると嬉しいです。
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