世界が滅ぶ時 第9話 By KEN
「ん〜!夏休みだ!」 ぼくは大きく伸びをした。 テストからも解放されて、今日は終了式を終えた。 だから、この後の一ヶ月ちょっと、ぼくはやる事がない! 「信士〜、これからお昼どう?」 「あ、うん、そうしよう」 明日香も何か解放された表情をしていた。 ぼくはそれを見て、少し笑ってしまった。 完璧な少女でも、こんな顔するなんて…。 「それで、信士は夏休みの予定はどうなの?」 「ぼく?…ん〜やる事はないね。あ、麗が、こっちに来るよ」 「妹さん?そう言えば、引っ越してくるんだっけ?」 明日香がちょっと奇妙な顔つきをしながら聞いてくる。 多分、ぼくも引越しするのではと、思っているのだろう。 「ん〜…多分、そうなんだろうけど…ちょっと揉めてるんだ」 「へぇ」 「やっぱり、友達ってのは強くてさ…一緒にいるとズルズルと関係を引きずっちゃうみたいなんだ」 「まぁ…分かるけど…」 「麗は、まだ受験の事なんて考えなくていいと思うし…友達といい思い出つくった方がいいと思うんだ」 それに…今生の別れではない。 ぼくだって、麗だってその気になれば会いにいけるんだから。 「でも、ちょっと寂しいとか?」 「あはは、まぁそれはあるかな。でも、麗も一人ぼっちになっちゃうしなぁ…」 「どうして?」 「父さんの仕事先ここら辺だからさ…」 「……」 「流石に麗、一人で暮らせなんて言えないし…」 「難しい問題ねぇ…ホームステイなんてそんな簡単に探せる訳じゃないし」 「そうだねぇ…」 結局、ぼくと明日香はうんうんと唸ってみたが解決策は出てこなかった。 「お兄ちゃ〜〜ん!!」 一週間経って、麗はぼくの住んでいる街にやってきた。 駅から出てきた麗は、三ヶ月前と変わらない笑顔だった。 「久しぶりだね、麗」 「うん。はい、コレ」 「はいはい」 麗がショルダーバックをぼくに渡す。 これは何時ものことだ。 どこかに出かけるとき、ぼくは麗の荷物を持ってあげる。 それが、何時ものことだったので、思わず手を出してしまった。 「お兄ちゃん、この三ヶ月、何かあった?」 ぼくのアパートに向かう途中、麗が何気にそう言った。 「ん〜、毎日新しい事があるよ。やっぱり、ここは都会だね」 「はは、そだね。お兄ちゃん少し都会者になったよ」 少し寂しそうな表情を浮かべる。 ぼく自身、変わったと思わなかった。 だけど、麗には分かるのかもしれない。 「そっかな?」 「うん。少しお洒落になったかな」 ぼくの服装を見つめる。 確かに、以前のぼくは服装に無頓着だったからな。 それのおかげで麗に怒られたりしてたっけ。 「あぁ…それは、明日香に…」 思わず言葉を濁してしまった。 そう言えば、ぼくは明日香の事を麗には一言も言っていなかった。 麗の目つきが妖しくなる。 「誰、明日香って?」 「あ、えっと…友達だよ」 …まだね。 「ふ〜ん…お兄ちゃんは、都会者になって軽い男になっちゃったんだね。あっちでは私をあんなに愛してくれたのに」 …ほら、やっぱり。 麗はこういう奴なのだ。 冗談なのか本気なのか分からない発言をする。 正直、麗の冗談は、結構危ない発言をすることが多い。 ぼくの甘やかしすぎか…。 もしくは、父さんの。 「だから、友達だってば」 「ふ〜ん…ったく、てっきりレイお姉ちゃんが好きなのかなって思ってたら、手が早いんだか…なんだか…」 少し意外そうな顔をされた。 綾波か…。 そう言えば、学校が同じだった頃はそんな事でからかわれたっけ。 「…なんか、麗って大人びたね…」 「そりゃあ、一人でいる時間が長かったからね。私だって少し自分を見つめる時間はあるわよ」 何か意味深だ。 「ほらほら、彼女との愛の巣に麗ちゃんを案内しなさい♪」 「はぁ…」 アパートに着くと、麗はぼくが鍵開けた瞬間、靴も揃えず上がりこんでしまった。 確かにいいんだけど、やっぱりこういう所は治ってないね。 ぼくも部屋に入ると、麗はすでにぼくの部屋を物色し始めていた。 「へぇ…中々いい所じゃない」 「うん。家賃も意外と安かったしね」 「ふ〜ん…私も一人暮らししてみよっかなぁ…」 「麗には少し早いよ…まだ中二だろ?」 「中二も高一も変わらないわよ」 「まぁ、歳はそんなに変わらないけれど…」 でも、ぼくは思う。 中二と高一って絶対違う。 気持ちにゆとりを持てたとか…。 精神って言うか生きていく事に、なんか上手くいく方法を見つけ出している時期だと思うんだ。 中二ってまだ子供っぽさが残ると思う。 「それにしても、お兄ちゃん…気でも狂ったの?」 ぼくが考え事している時に麗は、部屋を見て回っていたようだ。 「え?」 「だって、エッチな本が一冊もないじゃん。どうしたのよ?」 本棚の本を退けてみたり、ベッドの下を見たりしてる。 それと、勉強机の引き出しなんかをチェックしている。 一体、何処でそんな事覚えて来るんだか。 「なんで麗がそんなの知ってるんだよ?」 「そりゃ、同じ家に住んでたからね。何処にあるかくらい分かるわよ」 「……」 なんか、久しぶりに麗と話すと疲れる…。 全て麗が上手だ…。 「お兄ちゃんってお尻に敷かれるタイプだもんね。彼女さんに捨てられましたか」 「…だから、彼女はいないって」 「でも、捨てられたんでしょ?」 ぼくは、赤毛の少女の般若の面を思い浮かばせた。 …思わず背筋が身震いする。 「…さいです」 ぼくは認めた。 麗はそれにニンマリと笑った。 そんな時…呼び鈴が鳴った。 あぁ、なんか嫌な予感がする。 「誰か来たわよ」 「分かってるよ。部屋の中のもの漁るなよ」 「分かってるって」 「やっほ」 ドアを開けたらやはり、彼女がいた。 明日香は、ぼくの気持ちなど知らず、とても爽やかな笑顔だ。 「どうしたの?」 「ちょっと、散歩してたらねクレープ食べたくなったのよ。一緒に行かない?」 「誘いは嬉しいんだけど…「いいじゃない、行きましょうよ」 ……。 「あら、綾波さんじゃない?」 「碇君がお話があるからって言われて…そしたら」 麗は頬を少し赤くして目を閉じた。 非常にヤバイ事態なのでは? 「ふ、ふ〜ん…信士ぃ…どういう事かしらぁ!?」 「ひぃ…」 明日香の声色が怖くなる。 ぼくは、どうなったしまうのだろう? 「あたしと言うものがありながらぁ〜〜〜!!!!」 ぼくの意識はそこでブラックアウトした。 続く 後書き 麗が登場しました。 最初の設定より大分、性格が壊れてしまいました。 なんか、性悪妹って結構、好きな設定だったりします。 実際にいたら、切れることこの上なしですが(汗 次回の更新は早めにしたいです。
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