世界が滅ぶ時 第7話 By KEN
はぁ…会い辛いわ…。 朝も一緒に登校しなかったし。 …と、言うか…もう、いなかったし。 先に行っちゃったみたい。 結局、今日は、お昼まで経ったけど一言も信士と話さなかった。 「明日香ぁ、お昼一緒に食べよ」 「あ、光…え、ええ、いいわよ」 ちょうど、考え込んでいたので少し驚いた。 光は、良い友達だ。 本当に、きっと…今のあたしの返事で何かあっただろうって思う。 「どうしたの…?」 「…うぅん…何でもない」 あたしは思わず、信士の方の席を見た。 どうやら、信士はもう、何処かでお昼をとってみたいだ。 この分だと、屋上だと思う。 「ははぁん…碇君ね?」 「え、え?そ、そんなんじゃないわよ」 「嘘が下手ねぇ…最近、明日香と喋ると必ず碇君、碇君、碇君がぁ〜…じゃない」 「そ、そんな事…」 「あるわよ」 光にきっぱりと言い切られると、あたしは弱い。 やっぱり、光には隠し事なんて出来ないみたいだ。 「…ねぇ、喧嘩とかしたんなら…早く謝った方がいいよ」 「うん…そうね」 「じゃ、鈴原達を呼んで、屋上に行きましょ!」 「え?」 「え、じゃないわよ。毎日、教えてくれる明日香情報だと、碇君は屋上にいるみたいじゃない。さ、行こう行こう」 「う、うん」 こういう時に、押しが強いのも光だ。 あたしは、光に少し感謝した。 『でさぁ…私も引越しの準備してたんだけど…やっぱり一枚もなかった』 「そっかぁ…じゃあ、本当に全部燃やしちゃったんだ…」 『そうだね…お父さんもなんでこんな事したんだろう?』 昼休み、麗と喋るために屋上に出た。 ここには、見回りの先生とかは来ないから安心して喋れる。 『そう言えば、今朝のニュース見た、お兄ちゃん?』 「ん…ニュース?」 『そう。南米の自然災害の事』 「あぁ…南米のほとんどの建物が壊れてるって?」 『そう…雨雲は消えたけど…もしかしたら地震が日本に来るかもって…』 「そう…なんだ」 そういわれても、イマイチ実感がわかなかった。 やっぱり、身近な事ではないから。 「もし、来たら…ぼくの葬儀は安い奴でいいから」 『もう!あんまり面白くない冗談やめてよね!』 「あ、あはは…そうだね」 『まぁ、とにかく!お昼の電話はここまで!じゃあね、お兄ちゃん!』 「うん、また後でね」 携帯の通話を切ると、空を見上げて寝転がった。 青い空が見えて、白い雲が流れている。 青って言うと、ぼくは麗と綾波を思い浮かべる。 やっぱり、彼女たちの髪の毛は特徴的だから。 「…寝ようかな…」 ぼくは目を閉じる。 今日は、弁当もつくっていないので動かないに限る。 購買に行こうと思ってたけど、財布がないことに気づくと何となく無力感に晒された。 それに、明日香とも会いたくなかった…。 明日香が悪いわけじゃなくて…何となく胸の中のモヤモヤが消えてなかったから。 「碇く〜ん!」 「……洞木さん?」 「イインチョだけやナイ、ワイらもいるで」 「鈴原君、相田君に渚君?」 ぼくの目の前にいたのは、明日香の周りにいる人達だった。 きっと、明日香とともに作ってきた絆っていうのが彼らにはある。 今のぼくにはないものが、彼らにはあるんだ…。 少し、羨ましく感じる。 「信士…」 そして、明日香がいた。 少しはにかんだ笑顔をぼくに向ける。 「これから、お昼?」 「ええ、よかったら碇君もどう?」 「悪いけど、今日、弁当忘れたからね…そろそろ教室に戻るよ」 「そうなの?…なら、明日香!」 「え?」 「碇君にお弁当わけてあげなさい!」 ぼくは洞木さんが何を言っているかよく分からなかった。 少し経って何を言っているか理解すると少し気まずくなった。 「ちょ、ちょっと、光!」 「あら?碇君とは友達なんでしょ?それとも何?友達にだって自分のお弁当を分け与えてあげないの?」 「ちょ…もぅ、無茶苦茶ね…」 ぼくもそう思った。 「なんや?なんだったら、ワシが購買にひとっ走りしたるで」 「鈴原!」 洞木さんは鈴原君をヘッドロックして後ろを向いた。 何やら、ボソボソと喋っているようだ。 こちらからじゃ聞こえない。 「ふぅ…冬児君は鈍いなぁ。あ、信士君?」 「何、渚君?」 「いや、薫って呼んでくれると嬉しいな。…それより、ぼくのお弁当どうだい?」 そう言って、薫君は弁当箱をあけようとする。 だけど、それは叶わなかった。 「あんたがそれ一番分かってないじゃない!」 バキィッ! 「うぎゃぁぁあ゛!?」 明日香に思いっきり殴られていた。 その様子を見ていると、みんな仲がいいのがよく分かった。 ぼくの中学時代のようで…。 今は、そういう人…いないから羨ましい…。 「あはは…」 だけど、それに可笑しかった。 ぼくは、声を出して笑ってしまった。 その時、パシャッと何か音がした。 「うん、なかなかの被写体だね、よく撮れてる」 「え、…あ、カメラ?」 眼鏡をかけた、男の子がぼくにニヤリと笑う。 「まぁ、コイツらと仲良くしてやってくれよ。騒々しい奴だけさぁ…」 「いいのかな?…君たちは、昔から仲がよかったんじゃないの?」 「まぁね、腐れ縁だよ。まぁ、あいつらの仲間に、最後に入った俺だから言うけど…コイツらはいい奴だよ」 「うん…ぼくもそう思う」 「だから、さ…碇も入れよ」 「うん…そう言ってくれると嬉しいな」 「ああ、よろしくな、碇」 「うん。相田君もこれからよろしく」 「ああ。それと、俺の事は健介でいいから。「君」もいらない」 「わかった。ぼくも信士でいいよ」 ぼくと健介は、この日から友達になった。 彼は何となくだけど、ぼくと似ているんだと思う。 「あ・い・だぁ〜!」 「ひ…、な、なんだよ惣流?」 「問答無用…!」 そう言って、健介にヘッドロックをかける。 そして、小声で何か言葉をつぶやく。 「ありがとね」 「気にするなって…それよりも、やわこいなぁ…女の子は」 「……殺す」 あたしは、相田に感謝した。 あたしたちの中で一番大人なのは、相田だと思う。 あたしたちの友達の輪を一生懸命考えてくれる奴は、多分コイツだ。 「…でさ、信士」 照れ隠しに相田を沈めて、信士の方を向く。 …なんとなく、信士怯えてる? 「な、なに?」 「光が先に言ったけど、あたしのお弁当でよかったら…一緒に食べましょう」 「いや、でも…流石に…」 「…嫌なの?…あたしのママ…結構、料理好きなのよ?…ちょっと、信士には及ばないけど」 少し上目遣いで…。 「……いただきます」 「あ、美味しいな…」 「でしょでしょ?」 明日香って、嬉しいときってこんな風に笑うんだ。 私は、明日香の幼馴染だけど、こんな顔を見たのは、初めてだ。 そして、少し嬉しかった。 明日香が何時ものように元気になったから。 「はぁ…なんや、お暑いのぉ…」 鈴原の言い分は私がまさしく思った通りだ。 みんなと一緒にご飯を食べようとしているのだけど、明日香と碇君は二人の世界をつくっていた。 私の周りには、鈴原を含め三人の男の子がいた。 なんか、少しだけ意識しまう。 「委員長、飯くわんのかいな?」 食べれるわけないじゃない。 私も女の子だ。 一人の恋する乙女だ。 好きな人の前で大口なんて開けられない。 「あまりお腹減ってないから…」 「そうか…やっぱり…」 「やっぱり?」 「委員長もオナゴやっちゅうことやな」 鈴原は笑いながら言った。 「まぁ、あそこのオナゴもどきは、どうだか知らんけどな」 鈴原は明日香の方を見る。 …確かに、明日香のお弁当の量はかなり多い。 私では食べきれないくらいだ。 「何が、オナゴもどきよ!」 そう言って、明日香はお弁当箱のふたを鈴原に投げつけた。 「それに、あんただって、光と二人だけの世界をつくってるじゃない!」 「な、なに〜?いつ、わいがそんなのつくったんや?」 「今、さっき、2分前!」 鈴原の反論にも、負けず…。 明日香は鈴原を圧倒する。 「そうだねぇ…ぼくと相田君の存在なんか無視していたよね、相田君?」 「そうだなぁ…いや〜んな感じ!だよな」 「も、もう、渚君、相田君…」 きっと、私は顔を真っ赤にしているだろう。 鈴原の頬は少し赤くなっていた。 「じゃあ、ここで…」 ぼくと明日香は何時もの場所で別れた。 ぼくは、アパートに歩を進める。 空は、もう茜色だった。 「あ、信士…」 「…何?」 「…もしよかったら…晩御飯、一緒に…どう?」 「それは…」 昨日と同じ事が起きた。 「…ぼくが行っても大丈夫なのかな?」 「モチのロンよ!さ、さ、早く行きましょ」 明日香はぼくの手を引っ張っていく。 続く 後書き まだ、世界が滅ぶ様子はないですが、着々と…。 私の頭の中には、そんな構想が出来始めてます。
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