世界が滅ぶ時 第6話By KEN
「じゃあ…また明日」昨日も言った言葉。 何か、こそばゆい感じがするけど、それを毎日言える相手が出来たことがとても嬉しかった。 なんていうか、少なくとも…平凡な一般論だけど…大切な人に思える。「あ、あのさ…」 「…なに?」 「…夕飯…どうするの?」 「う〜ん…これから簡単な物つくろうかなって考えているんだけど…」しっかりした物は食べたい。 だけど、やっぱり面倒なものだ。 自分のためだけに自分で何かをつくる…。 それって、やっぱり面倒だ。 それに、やり甲斐というものが起きない。「…うちで食べてく?」 「…え?」 「…だ、だから、今から準備するのも面倒でしょ?だから、どう?」 「そりゃ…助かるけど…やっぱり悪いよ。それに家族の中に余所者がいるってのは気が引けるだろ?」 「そんな事ないって。パパは帰り遅いし、ママはそんな事気にしないわよ」 「そう…かなぁ…」 「うん!ほらほら、うちに来なさい!」 「わっ…あ、明日香」いきなり手を引っ張られたのだ驚いた。 少しこけそうになる。 だけど、目の前にいる彼女にこれ以上、触れてはいけなかった。 それは、良い意味でだ。 生まれてこの方、妹ぐらいしか女性の身体に触れたことがなかった。 今までこういう経験がないから、身体が硬直する。 目の前にいるのが、美少女だから…尚更、緊張する…。「あ…」 「こ、ここなんだけど…」 「あ、うん…」いきなり手ェ握っちゃって…よかったのかしら…? そう言えば、今まで男の子って意識して触れた事がなかった。 渚、鈴原、相田ともてを握ったりした事だってある。 あたしと手の感じが違うってくらいしか思わなかった。 だけど、信士のは何か違った…。 何て言うか、温かい…。 ゴツゴツした感じは他の男の子と一緒だけど…温もりが違った…。 …はぁ、色ボケね…。 前までのあたしと全然違う…。「た、ただいまぁ…」玄関にはサンダルが二、三足とスニーカーが並べてあった。 少しホッとする。 やはり、人を招くのに家がちらかっていたら恥ずかしい。 何より気になっている人だから…。「あの…お、お邪魔します」…って、あたしが靴揃えてないじゃない。 あぁ…何時もの癖で。 マイナスポイントだわ、これわ。「おかえりなさい…あら、明日香の彼氏?高校生になって数日なのに、手が早いわね明日香ったら」 「ち、違うわよ…そ、その…友達よ」 「そ、そうですよ。あの…ぼく、碇 信士って言います」 「碇…?」ママは一瞬、不思議そうな顔をする。「どうしたの?」 「え?…うぅん、私が大学生の時、親友で信士君と同じ苗字の人がいたのよ」 「へぇ…そうなんですか」 「ええ。珍しい苗字でしょ?長年会ってなくても頭に残っていたのよ」ママは少し笑って言った。 でも、確かに碇って珍しい苗字だし。 もしかしたら、信士のママがあたしのママの親友だったりして。 だったら、なんか偶然の縁って感じでいいなぁ…。「お母さんの名前…なんていうの?」 「…あの…碇 唯です」 「唯…名前も一緒なのね…」 「そうですか」あたしは…見逃さなかった。 信士の声が震えたことに。「写真とか…ある?」 「すいません…母さんの写真は父さんが燃やしてしまったので…」あたしは、それを聞いて声が出なかった。 信士には…ママがいない?「…ごめんなさい…根掘り葉掘り聞いてしまって」 「いえ…母さんは、ぼくが四歳の時に他界してしまって…ぼくも覚えてないんです…」 「……」 「ま、ママ…こんな場所で立ち話もなんだからさ…」 「そうね、いらっしゃい…」 あたしと信士は居間に行って紅茶を飲んでいた。 さっきからずっと何も話してない。 一言で言うと、気まずかった。 信士は何か考え込んでいた。 話しかけるという雰囲気じゃない。 こんな事になるなら、連れ来なきゃよかった。 ちゃんと、事前に紹介しておけばよかった。 後悔が後を過ぎる。 …後悔って本当に後にしか出来ないってわかる。「…明日香」はぁ…どうしよう…。 なんか、打開策がないかしら…。「明日香っ」 「え…ぁ」 「さっきの事なら気にしなくていいよ」 「…」 「ぼくは母さんの顔覚えてないって言ったよね?」 「…うん」 「どんな人だったのかも覚えてないんだ…。好きだったのか、嫌いだったのか…優しかったのか、口うるさかったのか…」 「……」 「物心がはっきりしてなかったし…しだした時には麗のお世話だからね」 「妹さん?」 「うん…麗の可愛そうだから…完全に母さんの顔知らないから…」 「そう…なんだ」 「…うん」信士は下を向いた。 何か、言葉をかけたい…。「信士は…寂しくなかったの?」 「…麗をあやすの大変だったし……もう慣れたんだと思う。それに、父さんも麗もいるから大丈夫だった」信士はあたしに笑顔を見せる。 前に見せてくれたのと違って…痛々しかった。「……ごめん、ぼく…やっぱり帰るよ…」そう言って、信士はあたしの家から出て行ってしまった。 声もかけれずに…。 「母さんか…」部屋の窓から外を見る。 外は、もう真っ暗だった。ぼくは、今の今まで…母さんの事なんて忘れていた。 忘れていようとしていた。 だって、そうしないと、ぼくが壊れそうだったから。 ピリリ…と携帯の着信音がした。 麗だった…。「もしもし…麗?」 『うん…お兄ちゃんの声が聞きたかったからさ…』 「そっか…ねぇ…」 『なに?』 「母さんの顔って覚えてる?」 『…うぅん。…だけど、お父さんが私に似てるって』 「ははは、だから、父さんは麗に甘かったんだ」 『そう…かなぁ…』 「うん、そうだよ。…でも、そっか…」 『どうしたの、急に?』 「いや…たまたま思い出したんだよ…」 『…珍しいね…お兄ちゃんからお母さんの話…』 「…そう…だね」 『うん、そうだよ。…でも、ごめんね…私もお母さんってどんな人か知らないんだ』 「そうだね…ぼくが覚えてないんだから、そうだよね…。ありがと、じゃあ、そろそろ…」 『うん…明日も電話するから』 「うん、おやすみ」 『おやすみなさい』電話を切った。 ぼくは溜息を吐く。続く後書きいやぁ…二ヶ月くらいご無沙汰ですね。 これから、出来るだけ更新します。 学校が、一週間後に始まるので、予定は未定ですが(汗 ご意見いただければ、執筆速度があがるかも(笑
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