世界が滅ぶ時
第15話


By KEN






「お久しぶりです」

「はい…お久しぶりです」


夏の暑い日差しに私は目を細めながら帰路を歩いていた。
こんな田舎でも道路はコンクリートで埋められている。
それが最近では当たり前となった。
私は子供の頃からここに住んでいた。
その頃はまだ、道路は獣道を多少ならしただけだった。
だが信士が生まれている時にはコンクリートで道は補修されていた。


「レイ君は元気ですか?」

「――ええ。おかげさまで…今は東京の方で一人暮らしです」


私は目を細める。
今、目の前にいる彼女も何年経っても変わらなかった。


「レイ君も貴女に似て綺麗になった事でしょう」

「あら、それを言ったら信士君は弦道さんに似て男らしくなったでしょう。麗ちゃんも彼女に似て…」

「ええ」


彼女の笑顔は似すぎている。
彼女は『彼女』に似すぎているのだ。
私は少し苦笑して、自分の家へと帰っていった。

そこには誰もいない。
子供たちはここにいない。
それが今になって寂しく思えてしまう。
こんな寂しさをあいつらは味わってきたのだろうか?

迎え入れてくれる人がいない寂しさを…。
























「夏祭り?」

「そうよ。今週の日曜日にこの街で一番大きなお祭りがあるの!」

「へぇ、そうなんだ」


夏祭り…。
それはぼくにとって懐かしい響きの物だ。
実際、中学を卒業するまで自分の住んでいた場所のお祭りには必ず顔を出していた。
まぁ単に麗に連れてかされただけなんだけどね。
だけど、あの雰囲気は嫌いじゃなかった。
騒々しいけど温かい場所だとぼくは思っている。

歴史を重ねた良い温かい物。
それがお祭りなんだ。
そこにはみんなの笑顔がある。
寂しさなんて吹き飛ばしてしまう。
笑い声をあげたくなる。


「それで…あたしと一緒に行かない?」

「いいの?良かったら友達とかも一緒とかもいいんだけど…」

「あー、二バカと光は都合が悪くて行けないみたい。渚の奴は…ほら」


明日香がそう言って目を麗の方に向けた。
そしてこっそりときっと彼女を誘うからと言っていた。
それならぼくと明日香がいない方が良いだろう。


「え、じゃあ…綾波は?」

「んー、渚が言ってたけど都合悪いから行けないだって」

「そっか…」

「ったく、今回は何時にもまして…何度も何度も綾波さんに電話をかけろって言ったのよ。ま、結局あたしも行かないって聞いたし」

「うん」

「それよりも…」


明日香は少しニヤリと笑った。
ぼくはちょっと後ろに下がる。


「な、何かな?」

「あたしの浴衣…楽しみにしてなさいよね!」

「え?…あ、ああ…そっか。お祭りって言えばそうだもんね」

「ま、最近の人は普段着みたいだけどね。だけど、シチュエーションは大事にしないと」

「うん」

「じゃ、信士も浴衣着ていきましょう」

「…え?」


いきなり明日香が訳の分からない事を言ってきた。
少し呆然とする。


「で、でも…ぼく、浴衣持ってないし」

「だーいじょうぶ!だって今日から買いにいくんだし」

「……え?」

「最近のデパートは便利よねぇー何でも売ってるし。それと、あたしのは家にちゃんと用意してあるから、お祭りまでのお楽しみー!」

「あ、あはは…」


確かに明日香の浴衣姿は楽しみだけど…。
ぼくの方は…どうなんだろう?


「あー、お兄ちゃんだけズルイ!私だって新しい浴衣欲しい!」

「じゃあ、麗ちゃんも買いに行く?あたしが見立てても良いわよ!」

「ほんと!?行く行く!さ、お兄ちゃん行こ!」


どうやら拒否の選択は出来ないみたいだ。
まぁ、お金の心配はしなくても良い。
元々、料理だって出来合いの物じゃなくて自分が作るものだから安いし。
服なんて自分で買うことはないから、いくらかお金には余裕がある。

まぁ…新しい浴衣を買うのも良いかもしれない。












電話を受けた後、私は深い溜息を漏らした。
これで三回目だ…。
かけて来た相手は渚 薫…。

喫茶店で会ってからもう一週間ぐらい経っている。
だけど一度も顔を会わせていない。
元々、夏休みは出歩かない体質だし、元居た場所では会ってもお互い知らないふりをしていた。
ただ学校外で会うと言うのが少し緊張する。
その子の事は嫌いじゃない。
だけど、学校の外で出会ったら…他人なんだ。
学校の中だと友達…外だと他人…。

そんなのが普通だと私は思っていた。

だけど、渚君は少し違っていた。
いや…渚君も違っていた。

私と気づいたらすぐに話しかけてきた。
私はほとんど言葉を発しない。
ただ聞いているだけ…。
少し相槌を打っているだけ。
きっとあまり好まれないタイプの人間だと思う。
だけど、渚君だけは私を気に掛けてくれた。
…渚君もだ…。

碇君も私を見つけたら話しかけてきてくれた。
だって、それは彼にとっては当たり前の事なのだから。
私は彼と話すのを何時の間にか楽しみにしていた。
それは人と話せるのが嬉しいのかもしれない…。
彼が好きだからなのかもしれない。

だけど、碇君には好きな人が出来てしまった。
私より頑張って彼に好意示して…。
いや…私なんて今に考えれば底辺の様な存在だ。

何の努力もしないで相手に自分を気づかせるなんて虫の良い話だ。
こういう事はお互い努力してお互いを見せ合わないといけない。
それが私には出来ないのだから、好きになんてなってはいけない。






























『みなさんにお伝えします。南アメリカの大陸上空に現れていた暗雲がなくなりました。なお、現在調査団が地域に行き原因を調べています』


続く


後書き

かなり期間が空いてしまってすみません。
現在Fate SSと並行して書いております。
頑張って続きを早く書けるように頑張りますね。

広告 [PR] 再就職支援 わけあり商品 冷え対策 無料レンタルサーバー ブログ blog