世界が滅ぶ時
第13話
By KEN
「いぃやっほぅ〜!!」
跳ねる水しぶき…。
照りつける太陽…。
なんて、言うか…夏だなぁ…。
ぼくは空を見上げた…。
照りつける太陽は、先程プールから上がったぼくを乾かそうとする。
実際、背中には水滴がほとんど残らず乾いていると思う。
「ねぇねぇ信士、折角プールに来たんだから泳がないと損でしょ?ほら入った入った!」
「あ、うん…」
この街の市民プールはとても良い所だった。
ぼくの住んでいた場所のプールより設備は整っているし…。
結構、大型なプールだからたくさん人が来ても泳げるスペースはいくらでもあった。
「ほら、ここからあそこまで競争しましょ♪負けたほうは…ジュース奢りだから」
「え、そ、そんなぁ…」
「ほら、レディ…ゴー!」
ぼくの気持ちも知らず、あの子はもう泳いでいってしまった。
「もぅ、明日香ったら!」
ぼくも急いで追いかける。
泳ぎは特に得意って訳じゃないけど…なんとなく負けたくなかった…。
それと、気恥ずかしさの所為で少し力みたかった…。
だって、明日香ったら…あんな水着を着てくるんだもの…。
急いで水をかく…。
前に進む時、水の流れる感触が気持ちよかった。
「はいっ、ポカリスウェット!」
「あ、ありがとう…」
明日香は少しムッとしながら、ぼくに缶ジュースを渡してきた。
手加減とかそういうのじゃなくて、明日香が勝ったんだろうなぁって思ったら…。
何時の間にか、ぼくは明日香を抜かしていた。
勝負が終わった後、ぼくがお金を出そうかと言ったら…。
フンッと怒って自販機のある所に行ってしまった…。
ぼくも自販機のとこに行くのだが、頑なに明日香は賭けは賭けと言って譲らなかった。
「まぁ、負けだしね…。次は、勝つわよ」
フンッとそっぽを向いている。
何か、可愛い…。
麗とは違う拗ね方、他人の拗ねる顔を今まで見たこなかったけど…。
なんとなく、嬉しかったりするんだ…。
「明日香ってさ…」
「なによ?」
まだ、少しキツイ目をしていたけど…。
「可愛いよね…」
「は、はぁ!?な、何言ってんのよアンタ?」
「心からそう思っただけだよ」
泳ぎ疲れて、少し頭の中が単調的な考え方しか出来なくなっているのか…。
よく分からないけれど、割と落ち着いていた。
自分が恥かしい言葉を言ったのに、苦笑するのを我慢できる余裕があった。
明日香は顔を赤くして、あちらこちらに目をそらしていた。
「……ホント?」
「え?」
「あたしって、可愛いの?」
「ぼくは…そう思う」
そう、心の底から。
新しい土地に引っ越してきて、寂しく思わないのは君のおかげだから。
辛かったら、夏闇だけでも自分の家に帰ろうと思っただろう。
だけど、今はそんな気が起きない。
そんな気分じゃないんだ…。
「信士?」
「あ、ゴメン…。………もう一泳ぎする?今度は…映画のチケット賭けてさ」
「…ええ!望むところよ!」
チリリーン…。
風鈴が鳴り響く…。
今日は、昨日より涼しく感じるのはその所為かもしれない。
「あ…」
「待ったはナシだよ?レイちゃん…」
…この子も一役買ってるのかもしれない。
お昼過ぎからウチに来て、二人で将棋…。
年頃の女の子がする事じゃないわね。
そもそも将棋盤と駒があった事が不思議…。
引越し荷物に紛れ込んでいたのね…。
「後ちょっとで薫君をデートに誘えるぅ♪」
「…順番なんて関係ないわ」
「レイちゃんはね。だけど、私は大アリなの」
この勝負は渚君をデートに誘うのはどっちが先かを決めるもの。
なんか、麗ちゃんが物凄く強い。
「これで、詰みぃ」
「…ごめんなさい、捨て駒になって」
飛車で詰まされそうになったから、角行でカバー。
後、一回はもつわね。
麗ちゃんの次の手を回避して、勝負をきめないと…。
お互い完全な詰みがまだないから、まだ時間が掛かるわね…。
「はぁ、泳いだ泳いだ!」
思いっきり伸びをする。
うん、満足…。
最終的には信士に勝てたし…。
……って、違うか…。
アイツ、力抜いてたわね。
少し腹が立ったけど、信士も少し済まなそうにしてたから、許すとしよう。
ん…でも、映画一緒に行く口実も出来たしね♪
嬉しい気持ちの方が大きいわね。
「ねぇ…しん…?」
信士の方を向くと、信士は少し複雑な表情を浮かべていた。
何かを我慢しているようなそんな感じ…。
歩き方がギコチナイ。
「どうしたのよ?」
「あ、うん…ちょっと日焼けで背中が痛くて」
「ん、ちょっと見せてみなさいよ」
信士の後ろに回りこむ。
む、あたしより首筋ほっそりしてるじゃない。
なんかムカツクわね。
「少し赤くなってるわね…」
「やっぱり?日焼け止め塗るの忘れたから」
「馬鹿ねぇ…言えば貸してあげたのに」
「うん…」
「ほら、早く戻りましょう。そのくらないなら氷で冷やせば大丈夫でしょう」
「うん…」
信士の手を無意識につかんで、早く歩くようにと急かす。
少し強引かもしれないけど、信士と手を繋ぐ口実も出来た。
今日は、いい日だと思う。
暑いけど、夏だから仕方ないしね。
それさえなければ、完璧な日よ。
信士の背中は思ったより酷くなかったし…。
コンビにで氷でも買って、それをジップロックに入れて、濡れタオルで巻いて背中に乗せればいいかな。
多分、それが今出来る最高の処置だと思うし。
ん、決めた。
あたしと信士はどんどんと歩を早めていった。
あたしがか…。
太陽の色が変わってきた…。
もう、夕方なのね…。
そうなると、四時間は将棋盤の前に座っていたのね…。
「勝負の途中だけど、いい?」
「…なに?」
少し麗ちゃんの声色が変わった気がした。
ハッと麗ちゃんの顔を見る。
「レイちゃんって、本当はどっちが好きなの?」
真剣な目で私を突き刺している感じ。
少し身体が強張る。
「麗ちゃんには、関係ないでしょ」
態と突き放すような言い方をする。
だけど、麗ちゃんの圧力は弱まらない。
「お兄ちゃんは、私の一番大切な人だから。一途にお兄ちゃんを好きでいてくれる人しか許さない」
「……」
「薫君にだって、そうしないと駄目。中途半端な人だったら許さない」
なんか…胸が苦しい。
息が止まりそう。
「子供の考え方?私は違うと思う」
そう言って、麗ちゃんは駒を進める。
私も何も言わず応手する。
「家族と一緒に育ったから、それが大事だと思うから…その気持ちが相手を幸せに出来ると思ってるから」
パチッと音をたてて…。
その後に…。
「王手っ」
「……負けたわ」
私はそう言って、黙々と駒を片付け始めた。
「…そろそろ代えるね。私は、どっちが好きでも、その人との事を応援するよ…。でも、どっちかじゃないと駄目。揺れるのは駄目…」
「麗ちゃん…」
「…じゃね…」
麗ちゃんの顔が、夕日にあたって…。
何となく寂しそうで儚く見えた。
あぁ、そうだ…。
碇君達は、人を思いやる事がどれだけ大切か知ってるんだ…。
続く
後書き
かなりお久しぶりになりましたね。
最近、忙しくて…。
それと、某ネットゲームが楽しいんですよ(爆
今月は春休みがあるので、その時にまた一本書き上げようと思います。
これからも頑張りますので、応援よろしくです。
でわw