世界が滅ぶ時
第1話
By KEN
世界が滅ぶって良く聞く言葉だと思う。
いろんなエライ人が、よくそんな事を言うけれど、その人達だってホントにそうは思っていないと思う。
だって、世界が滅ぶって事をただ呆然と見ているだけなのだから。
それは、なにも知らないふりをして、なにもしないだけだ。
ぼくだってそうだ。
ぼくだって、普通の人間だ。
世界が滅んでいるなんて知らないし、別にそんな事、頭にはない。
もしだけど・・・。
世界が滅んでいる姿を、目の当たりにしたら、ぼくたちはどうするだろう?
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『・・・次は〜第三新東京都市〜ご降りの際はお忘れ物のないよう注意をしてください・・・』
ぼくは、電車から外の景色を見る。
そして、少しうんざりした。
「・・・ビルばっかりだ・・・」
ポツリと独り言を呟いてしまった。
ぼくの今まで住んでいた場所は、簡単に言えばイナカだった。
田んぼがあって、高いビルなんてないし、畑もあった。
秋になれば、カカシもあるし、カラスはそれを気にせず作物を食べる。
ぼくは、そんな場所に住んでいた。
「こーいう場所があるから、地球は危ないって言うんだよな・・・」
少し冗談ぽく言いながら、ぼくは少し自分の言った冗談に笑ってしまった。
ホントに呆れるような冗談だ。
・・・さてと、降りる用意をしなくちゃ。
「うわ〜・・・ビルばっか」
駅から出て、ぼくは周りの風景に少し驚いた。
目にみえる場所は全部、ビル、ビル、ビル・・・。
そして、人が多かった。
「はぁ・・・凄いなぁ・・・」
少し感動さえもおぼえてしまった。
でも、イマイチよく分からなかった。
なんで、この地をこんなに変えなくてはいけないと言う事に。
別に、昔ながらの木造の建物でもいいと思う。
土地もこんなに改変させてなんの意味があるんだろう?
便利ってホントに便利なのかな?
ぼくの住んでた場所だって、それにきっとこの日本にはまだこの地に比べたら未開の地って言う場所だってある。
だけど、そこでも、人は生きて行けるんだ。
・・・そんな事言っていても始まらない、・・・行くか。
事の始まりは、ぼくが東京の、ここにある高校の受験に合格してからだ。
ぼくの住んでいた場所では、通えないと判断して、一人暮らしする事になったんだ。
・・・少しの間だけどね。
偶然だけど、父さんの仕事の関係で出張先もここだった。
でも、学校は四月からで、父さんのここでの仕事はまだ先の六月からだった。
だから、少しだけ一人暮らしをする。
実際、親のいない生活っていうのも少し憧れていたので少し嬉しかった。
でも、まだぼくは責任がとれる程、大人じゃないし、無責任だ。
だから、プチ一人暮らしって言うのが一番してみたかったんだと思う。
実際、この歳の子って熱しやすくて冷めやすいと思う。
・・・まぁ、ぼくの考えだけどね。
『ちょっと!やめてよ!大声だすわよ!』
・・・・・・。
いかにも怪しい路地裏って言う所から声が聞こえた。
・・・多分、女の子のだ。
どうしよう、見に行ってみようかな?
「いいだろ、ちょっとつきあえよ。こんくらい誰でもしてるって」
あたしの周りを取り囲んでいる、三人の馬鹿どもが、ニヤニヤしながらアタシに近づいてくる。
まったく、吐き気がする・・・。
「なに言ってんのよ!あんた馬鹿ぁ?」
「いいじゃん、嫌がって引っ張っていきゃ」
「いや!嫌よ!」
あたしは身震いした。
身体が固まって動かない。
『おまわりさーん!こっちです!』
声が聞こえた。
「なっ」
「お、おい、やべぇぞ、逃げるぞ!」
「お、おう」
・・・よかった。
助かった・・・。
三馬鹿達は、慌てて逃げ出していった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
一人の男の子が心配そうにあたしに声をかけた。
少し、溜息が漏れた。
力が抜けて、その場に座り込んだ。
「だ、大丈夫?」
慌てて駆け寄ってくる。
「う、うん・・・大丈夫」
少し泣きそうになったが、なんとか堪えた。
男の子は、あたしが大丈夫と言うと少し表情を緩めた。
なんか、変な奴。
「そう・・・よかった」
ニコッと笑顔を見せた。
・・・なんだか、さっきの馬鹿共とは大違いじゃない・・・。
それに、なんでだろう・・・あたし、顔赤いんじゃない?
「え・・・あ、うん。ほんと、ありがとう」
「いーよ、じゃあ、ぼくはこれで」
そう言うと、その子は地面に置いたショルダーバッグを肩にかけてあたしに背を向けた。
もう少し話していたかったけど・・・。
仕方ないよね。
・・・だけど。
「あ・・・そうだ」
あたしの方に振り返って・・・。
「あのさ、このアパートって何処にあるか知ってる?」
男の子は、紙切れを見せながらあたしに言った。
「え?」
「う〜ん、人が多いなぁ・・・」
男の子は物珍しそうに辺りを見回しながら呟いた。
なんだか、少し可笑しかった。
なんていうか、へぇ・・・って感じ。
「ここに来たの初めて?」
「うん。・・・あ、修学旅行でちょっと来たことあったなぁ・・・」
「へぇ・・・」
「まぁ、こっちの高校に合格して、こっちに住む事になったんだ」
「へぇ、それじゃあ、頭いーんだ」
「どうかな?運がよかっただけだよ」
男の子は頭をかいてそう言う。
でも、こっちの高校は頭良くないと入れないからね・・・。
あたしも、その仲間だけどね・・・あはは。
「あ、アパートが見えた」
「ええ、あそこよ」
「うん、ありがと。じゃあ、ここら辺で。ありがとう、道教えてくれて」
「うん。あたしもありがとう助けて貰っちゃって」
なんか・・・不思議だ。
こんなにも自分が素直にありがとうと言えたのは何時以来だろうか?
「あ・・・そうだ」
「なに?」
「ぼくの名前は、碇 信士。よろしくね」
「ええ、よろしく。あたしは、惣流 明日香」
「うん。じゃ、また会えたら会おうね」
男の子は、そういってアパートの方へ走っていった。
「・・・また、会えたら・・・か」
会えるに決まっているじゃない。
あたしは、そういって、アパートの近くの家を見た。
だって、あたしの家は、あそこなんだから。
「ん・・・疲れた・・・」
荷物を一通りに配置して、一息ついた。
よかった、結構よさそうな部屋で。
・・・一人暮らしには少し贅沢かなぁ・・・。
「明日から・・・学校か。・・・うん、がんばろー!」
少しはりきり気味に言って、疲れを吹き飛ばす。
何とはなしに、テレビのスイッチをつけた。
『南半球全体に黒く分厚い雲が覆っています。大型の台風、そして原因不明の地震が相次いでいます・・・』
ぼ〜っと、その様子を見ながら、なんだか大変だなぁ・・・って思った。
実際、自分に起きている事ではなかったから、それがどうしたって感じだった。
・・・人間ってそーいう奴だ。
でも・・・。
「雨は・・・嫌だな」
これだけは、言えた・・・。
続く。
後書き
新連載です。
タイトルが、すっごいネガティブなタイトルですが、あんまし暗くはならないと思います。
ちょっと、シリアスっぽい所を入れますが。
・・・それと、多分きっと絶対に地球は滅ぶお話だと思います(汗
でも、変わらないのは、LASかな(笑
よろしかったら、これからこの連載にできるだけお付き合いして頂けると幸いです。
KEN
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