41.眠い By KEN
「何…コレ?」 美奈は則和の部屋の前で困惑していた。 ドアには貼り紙のようなものが貼ってあった。 『今日一日、望月 則和の部屋に入るべからず』と書いてあった。 美奈はドアを開ける事を躊躇した。 何時もの強引さはどこかへ消えてしまったようだ。 だが、彼女にも譲れないものがある。 二人とも進級して、いくらか忙しい時期となっていた。 そして、則和も高校を卒業と共にこの家を出て行くと言った。 寂しがり屋の美奈も、なんとかそれに承諾したが、この一年は出来るだけ一緒にいようと言った。 だから、今日だって一緒にいたいのだ。 則和が籠城を決め込んだら突入だってするだろう。 「よし…っ」 どうやら美奈は則和の部屋に入る事を決めたようだ。 ドアを恐る恐る開ける。 そこには、則和が眠っている姿があった。 少し布団も乱れている。 髪の毛もいくらか寝癖がついているだろう。 美奈はこの姿を見て少し笑った。 則和は美奈と一緒に寝ている時は本当に寝相がよかった。 彼女自身が、悪い方なので何時も悪いと思っていた方だ。 「私とじゃ、安眠できないのかな?」 少し複雑な気持ちのようだ。 人間は木の上で生活してた事もあるらしい。 男は家族を守るために何時間おきかに目覚める体内時計がある。 もしかしたら、則和は本能的に美奈を守るために数時間おきに起きているのかもしれない。 もしかしたら、美奈の言い分は当たっているかもしれない。 この則和の寝方は一日二時間説に近いものだ。 だが、それは彼にとってはあまり寝た気がしないからこの行動に出たのかもしれない。 「そんなに迷惑なら…言ってくれればよかったのに…」 かと言って、みなは則和と一緒にいないと気持ちよく寝れないのも事実だ。 人の温もりを知ってしまった以上、中々それはやめれない。 少し則和の部屋を見回す。 彼にしては珍しく何冊かの本が床に散らばっていた。 美奈はその何冊かの本に目を通してみる。 「何語…?」 美奈には解読不可能な本ばかりだった。 だが、最後の一冊は違った。 「ぶっ…何、コレ〜」 美奈にしては、かなり久しぶりの本だった。 中身は18歳以下禁止のものばかりだった。 自分たちもその本の中身のような事をした事があるが、あらためて見ると、顔に血が集まってしまう。 「こ、こんな事もするんだ…」 自分達にとって未知の領域も載っていた。 その本から逃れるには数分を要した。 「則和さんの…馬鹿」 美奈はそう言って、則和の腹の上に何かを落とした。 ズンッと何か重たい音がする。 その後、則和の呻き声が聞こえた。 「グッ…」 とても苦しそうだった。 流石に、この衝撃で則和は目を覚ました。 「…美奈?」 寝ぼけ眼の則和は睡眠を妨害した人物を見る。 「…美奈?…じゃあ、ありません!」 美奈の怒気はかなり高くなってきたようだ。 凄みは利いても怖くないのが彼女の悪いところかもしれないが…。 「一体全体、何なんですか!?あの貼り紙もエッチな本も!?」 「……」 則和は何も返事をしなかった。 「則和さん!?」 「…すぅ…」 また則和は眠りだした。 「むぅ…馬鹿にしてぇ!」 ポカポカと言う擬音が聞こえてきそうな音で則和を叩く。 「…んぅ…なんだ?」 「だから!」 「…貼り紙は言葉通り、意味は一日中寝たいから…。その本は刈川の」 そう言って、気だるそうに美奈に背を向ける。 勿論、則和は寝たままだ。 「あ…刈川君の…」 「無理矢理、貸してきたからな…」 その後に「中身も見てない…昨日はずっとこっちの本を読んでいたから寝てない」 「…だから、今日一日中、寝るんですか?」 「ああ」 そう言って眠りの世界に旅立ちそうになった。 「……」 「…おい」 美奈は則和のベッドに潜り込んだ。 「……」 「何、拗ねてるんだ」 「別に…何でもないです」 「…あるだろ?」 美奈の方に体を向ける。 「別に…私、そんなに我侭じゃないです」 「……」 「あんな貼り紙しなくても、訳を言ってくれればよかったんです」 「…悪いな…」 そう言って美奈の髪の毛を撫でようとする。 「駄目…今日中、私に触っちゃ駄目です」 そう言われたので則和は手を引っ込めた。 溜息を吐いて眠ってしまう。 「……」 意地悪のつもりが逆に自分が不利になってしまった。 美奈の方から手を出しそうになった。 「うぅ…」 半べそをかいていた。
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