4.それだけは勘弁してください By KEN
「そ、それだけは勘弁してください」 久しぶりにレンタルビデオ屋に来ていた。 何故、そう言う事になったかと言うと、美奈曰くテレビが面白くないらしい。 それと、最近の映画はすぐにビデオになるからここに来た。 …確かに話題作はビデオになるのは早い。 だけど、テレビで見るとCGなどの合成がもろ分かりなのは美奈は知っているだろうか? 「なんでだ?お前の選んだアクション物と変わりないだろ?」 美奈が選んだのは『スパイダーマン』や『デアデビル』と言う代物だった。 美奈なら恋愛物かと思ったが…。 「人の恋愛を羨ましがったり、感動しなくなりましたから」 美奈は苦笑しながら言った。 「ニセモノじゃなくて、リアルで映画のような恋をしていますし」 皮肉の意が含まれていると思う。 思わず苦笑してしまった。 「そうか…ならコレでもいいよな?」 先ほどのアレを見アに見せたのはホラー物の映画だった。 それを見た途端、美奈は固まった。 心なしか顔色が悪い。 「それは…」 「まさか、高2になって、まだこういうのが怖いなんて言わないよな?」 「そ、そんな訳ないじゃないですか」 「ならいいだろ?」 「え、うぅ…」 美奈は涙目になっていた。 「はいはい…いいよ、これは俺一人で見るから」 そう言って、美奈の持っていたビデオと一緒にカウンターに向かう。 グイッ…。 「なんだ?…いいだろ俺だけが見るんだから」 「違います…私の借りようとしてた奴…置いてきます」 「と、言う事は、一緒に見ると言うことか?」 「…はい」 「はぁ…怖いなら下で君恵さんと連ドラ見てこいよ」 「うぅん…だ、大丈夫だから」 ビデオデッキをセットしながら美奈に言う。 美神家には、ホラー物が駄目らしく、一人で見ようと決めていた。 レンタルビデオ屋では単に美奈が強がりを言ってるだけだと思った。 だが、予想に反して、美奈はこのビデオを見る事を決意したようだ。 …ちなみに、テレビとデッキは自分が塒していた場所から持ってきた。 テレビの大きさは多分、20数インチの奴だ。 それなりの大きさだと思う。 「そ、そう言えば…なんていう映画でしたっけ?」 「リングのアメリカ版…」 「うぅ…噂の…」 「だから、下行けって」 「う、うん…」 「な?」 「だ、駄目です見ます」 ここから動かない意志表現なのか? 人のベッドの掛け布団に包まってベッドの上に座り込んでいた。 「勝手にしろ…」 リモコンで再生ボタンを押して、美奈の隣に座る。 「手…握って…」 「いいよ」 そう言ったと同時に両手で握り締める。 「その格好…不気味だぞ」 「い、いいんです…」 もし、暗闇で見たら不気味だ。 「お、始まるな…」 オープニングは薄暗い場所、暗い音楽で始まった。 ある意味お決まりだ。 「うぅ…」 「ほら、下見るな。音だけの方が怖いぞ」 そう言って、空いた手で美奈の顔をテレビに向ける。 「うぅっ!」 ちょうど一番ヤバイシーンだったかもしれない…。 固まってるコイツ…。 「お〜い、終わったぞ…」 「……」 意外に怖くはなかった。 …が、美奈にとっては違ったようだ…。 ずっと固まったまま動かない。 「…トイレ行って来るから手を放してくれ」 …反応はない。 仕方なしに少し強引に放した。 静かに部屋を後にする。 「あら、終わったの?」 「えぇ」 トイレから帰ると、君恵さんがいた。 「それで、美奈はどう?」 「見てみます?」 そう言って部屋のドアを開ける。 「…何か不気味ね」 「…ですね」 トイレから帰ってきても、美奈は同じ体勢だった。 「イタズラしてみる?」 「?」 君恵さんは言うと、手だけ部屋に入り、電気のスイッチを切った。 パチッと言う音と共に部屋が真っ暗になっていた。 そして、数秒…。 「きゃああああああぁあぁあぁぁあああ!!!!???」 とてつもない程の大きな叫び声がした。 そして、また、沈黙…。 「ど、どうなったのかしら?」 「…さぁ…」 分かっていた事だろうに。 「……」 「…じゃ、じゃあ、私はあの人のお夕飯の準備を…」 君恵さんはそう言うと、下に行ってしまった。 …素早い…。 仕方なしに、部屋に入る。 「おい、生きてるか?」 「ぅ…ぅっ…ぅっぅっ……」 暗闇なのでよく見えなかった。 だが…よく目を凝らすと、美奈の身体が震えている事に気づいた。 そして、か細い声も…。 「…はぁ…悪かったな美奈…」 隣に座って美奈の肩を抱く…。 「それに、今のイタズラも悪かった」 「ばか…」 「……」 「ばかばかばかばかばか…」 そう言うと、俺を押し倒して俺の胸に顔をうずめて泣きじゃくった。 少し後悔しながら美奈の背中をなでた。 「泣き止んだか?」 「……」 首を横に振った。 「もう寝る時間だ、部屋まで送ってく」 「……」 また、首を横に振った。 はぁ…。 「怖いのか…?」 「……」 今度は縦に振る。 「君恵さんのとこに行くか?」 「……」 横に振る…。 「何処で寝るんだ?」 「…ここ…」 「……なら、お前の身体に巻いている布団を返せ」 そう言うと少しだけ体を起こす。 そして、布団の両端を持って俺を抱きしめる。 「寝にくい…」 「我慢してください…」 「…ったく…」 足の方がベッドの上にないので少し冷える。 なので少し上半身を軸にして、向きを変える。 「…で、映画はどうだった?」 「思い出したくないです」 「…そうか。じゃあ、次もホラー物にするか?」 「もう、絶対嫌です!」 少し可笑しくて笑ってしまった。 「分かりましたよ…お姫様」 「うぅ…」 「ほら、早く寝ろ寝ろ。ちゃんと、抱きしめておいてやるから」 「ぅん」 泣き声を含んだ声が返ってきた。
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