3.大丈夫か? By KEN
「ゴホッ・・・ケホッ・・・はぅ・・・」 「ホント・・・器用な奴だな。休みの日に風邪ひくなんて」 少し呆れた声で言う。 美奈も自覚しているようで、シュンとなる。 「ごめんなさい・・・今日、折角空けてもらったのに・・・」 「・・・気にするな・・・」 そう言って、そっと頭を撫でた。 「なんか、食い物でもいるか?薬も飲まないといけないしな」 「うん・・・果物とかあったらお願いします」 「分かった、君恵さんに聞いてくる」 少し苦しいな・・・。 本当、なんでこんな時に風邪なんてひいちゃうんだろう。 最近、則和さんは進路の事で何かと忙しい。 ようやく暇がちょっと出来たみたいで、デートの日が今日になった・・・。 ・・・だったのに、風邪をひいちゃった。 ・・・夜遅くまで起きていた所為かなぁ・・・。 則和さんに伝染(うつ)ってなければいいけど。 ・・・昨日の夜も則和さんのベッドにこっそり潜り込んで・・・。 ・・・・・・はぁ、なんで毎晩、こんな事してるんだろう・・・? 仕方ないよね・・・毎朝、確実に則和さんに起してもらうためだし・・・。 潜り込んだ時に見える則和さんの寝顔も・・・。 その二つが何よりも嬉しい・・・。 だから、いろんな口実を用意している。 まぁ、毎回こういう事を続けていると、則和さんも呆れていた。 それで、『面倒だから始めから一緒に寝ればいいだろ?』と言われた。 それが、出来ない。 乙女の微妙な心の構造だ。 ・・・コンコン・・・ 「あ、はい」 「俺だ・・・リンゴ持ってきた」 「あ、ありがとうございます」 「入るぞ」 「うん」 ・・・そう言えば、私の今寝ている場所って・・・則和さんの部屋なんだよね・・・。 昨日も潜り込んだんだし、目が覚めたらここにいるのは当たり前か・・・。 目が覚めた時は、もう毛布とか掛けられていた。 きっと、すぐに則和さんが気づいて、掛けてくれたんだと思う。 そして、目を閉じると、他の感覚が鋭くなる。 嗅覚も鋭くなって、ベッドからは則和さんの匂いがした。 ・・・辺かもしれないけど、嬉しかったりした・・・。 「ほら、口開けろ」 「うん・・・あ〜ん・・・」 小さく切られたリンゴを口に入れられる。 少し喉が乾いていたのでいつもより美味しく感じられた。 喉が潤ってくるのがわかる・・・。 「美味しい・・・」 「そうか。・・・ほら、もう一切れ・・・」 「うん・・・あ〜ん・・・」 「ごちそうさま」 「ん・・・なにか他にしてほしい事とかあるか?」 「うぅん。大丈夫です」 「じゃあ、皿洗いに行ってくる。はぁ・・・」 「どうしたんですか・・・?」 「君恵さんが、出掛けたのは思い出したんだ。食事会だそうだ・・・」 「もぅ・・・一人娘がこんなに苦しんでいるのに・・・こほっこほっ・・・」 「・・・お前は大人しく寝てろ」 「うん」 私は目を閉じた。 段々、ゆっくりと落ちていく感じがする。 何処かは分からないけど、なんだか寝る時はそんなふうに感じる。 っして、底についたら眠れるんだと思う。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 『あ・・・則和さん・・・』 最近、後ろ姿でもあなたが分かる。 自分でもなんかスゴイと思う。 『則和さんっ』 急いで追いつく。 そして、則和さんの腕に抱き着く。 『え・・・?』 そのハズだったのに・・・。 私の手は則和さんをすり抜けてしまった。 勢いがつきすぎて、転んでしまった。 呆然と立ち上る。 今度は、そっと触るように近づく。 だけど・・・絶対にあなたに触れられなかった。 『則・・・和・・・さ・・・ん・・・?』 あなたの目は昔に戻っていた。 前のように突き放すような目だった。 私をチラッと見ると、別に関心もないように通り過ぎていった。 『・・・ど、どうして・・・?・・・いやっ・・・行かないで・・・おいてかないでください・・・』 一生懸命に走って追いかける。 ・・・すると、銃声がした。 『え・・・』 急いで音のする方へと走る。 『いや・・・いやいや・・・いやぁぁあああ!』 彼が血まみれになって倒れていた。 うずくまり、泣きじゃくっても・・・。 きっと、私はわかってしまっている・・・。 大切な人は、・・・もう・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「美奈?」 「いや・・・そんなの、いやぁ・・・」 「どうしたんだ?」 振動が伝わる。 今までの出来事が夢だと気づく。 「あ・・・あ・・・・・・」 顔を覆っていたいた手を離すと。 「則・・・和さん」 「悪い夢でも見たのか?」 「う・・・うぅ・・・・・・よかった・・・」 目の前には、自分が一番会いたかった人がいた。 咄嗟にその人を離さないように抱き着く。 「則・・・和・・・さ・・・」 「・・・何だ?」 「もっと・・・強く・・・強く抱きしめてください・・・」 もっとあなたを感じていたいから。 「こわくて・・・あなたが・・・いなくなっちゃう夢を見て・・・」 きっと私は、縋り付くような眼差しをしているのだろう。 あなたは、そっと力を入れて抱きしめてくれた。 「悪い・・・。でも、約束する・・・これからは大丈夫だって」 脅えている私を包み込んでくれる。 「・・・あ」 「美奈・・・」 「・・・則和さ・・・ん」 そっと目を閉じる。 キスをされた・・・。 「・・・ん・・・んぅ・・・」 「・・・悪いな、熱上がったか?」 「・・・馬鹿」
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