2.夜明け By KEN
俺は夜明けが嫌いだ。 夜明けは俺の汚い姿を明るみに出すから。 血で汚れている姿をはっきりと俺に見させるから。 闇の中が居心地が良かったのはこれの所為だろう。 だから、眠りから覚ますときも完全に・・・少なくとも空が夜の色をしていない時でなければいけない。 そうしないと、自分がとてつもなく嫌になって・・・怖くなる・・・。 今、一番、俺がコワイのは夜明け・・・。 ベチッ。 「・・・痛っ」 鈍い音と鈍い痛みが起きた。 無理矢理、覚醒させられる。 地の底にいた自分がムリヤリ浮き上がらせられた感じがした。 ・・・一体・・・誰だ? 「・・・はぁ・・・」 美奈だった・・・。 幸せそうに眠っていた。 何時の間にか自分のベッドに潜り込んでくる彼女。 理由は毎回違う。 「・・・ったく・・・」 そう言っても思わず口元が緩んでしまう。 ・・・なんでかは・・・知らないけれど、嫌な気分ではなかった。 良く見ると彼女は、そっと俺に抱き着いている。 やはり、好きな人に触られるのは心地の良い事だ。 言葉がなかった時代の人間の愛は。 愛の伝えかたは触れ合いで伝えていたのだと思う。 「・・・・・・っ・・・」 外を見た。 ・・・空はまだ暗かった・・・。 だけど、少し光を帯びた空だった。 黒が青に変わるような感じの色・・・。 こんな時、思い出すのが・・・。 昔の事・・・。 自分の手を見た。 両手が真っ赤になっている。 黒いような濃い黒の混じった赤。 目を凝らして見ると、より鮮明に血が目に入る。 鈍い太陽の光が血がてかる。 「はぁ・・・はぁはぁ・・・・・・はぁ・・・」 辺りがぼんやりと見える。 頭に鈍い痛みを感じる。 呼吸が荒くなる。 息が詰まる。 「はぁ・・・はぁ・・・これは・・・」 幻覚なのは、分かっていた。 最近、この時間帯に起きるとこの症状が起きるようになっていた。 段々とリアルになっていく。 自分に夢遊病の気がない限りそんな、人を殺すと言う行為などしない。 ・・・ましてや、そんな人を殺すと言う欲求など今は持ち合わせていない。 ・・・これは、きっと、俺の乗り越えなくてはいけないもの・・・。 ジャー・・・。 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」 洗浄脅迫とでも言うのだろうか・・・。 自分の汚さを洗い流すと言う行為。 何度も何度も手を擦り合わせて血を落とす。 ついているはずのないものを一生懸命に落とそうとする。 分かっているのに・・・。 止められない・・・。 「・・・くそっ・・・くそ・・・」 フラッシュバックが起きる。 冷めた目をしている俺。 銃を誰かに向けている。 引き金に手をかける。 銃弾が発射される。 命中した誰か・・・。 血が飛び散る。 その血が・・・。 俺に降りかかる・・・。 ・・・誰が・・・あんな事を・・・?・・・ ・・・俺・・・?・・・ 「う、うわぁあああぁぁぁぁあああ・・・!?」 フラッシュバックの中の俺は人を殺し続けている。 その度に血が俺を覆っていく。 ・・・ドスンと尻もちをつきながら倒れ込む。 何も見えないように膝を抱え込む。 目をギュッと閉じる。 「はぁ・・・ふぅ・・・」 気分を落ち着ける。 呼吸を整える。 少し落ち着くと変なところが冷静になる。 自分の先ほどの叫び声の所為でみんな起きてこないとか。 早く蛇口から出ている水を止めなくてはいけないとか。 早く目を開けれるようにしなくてはいけないとか。 少し自分が可笑しかった。 「則和さぁん・・・ここにいるんですかぁ?」 大分時間が経ったのか・・・美奈が起きたみたいだ。 自分が傍にいなかった所為か、俺を捜しているみたいだ。 俺は、まだ立つ事もできなかった。 声を出そうと思ったが、イマイチ声が出る事に自信がなかった。 「ど、どうしたんですか・・・?そんなとこに座って・・・」 「・・・悪い少し気分が悪くなって・・・手を貸してくれないか?」 「・・・え、ええ」 美奈はそう言って手を差し出したようだ。 だが、まだ目を開けれないので美奈の手が何処にあるか分からない。 「・・・悪い・・・手をつかんでくれ・・・目が開けれないんだ・・・」 「は、はい」 美奈も異常事態に気づいたのか、声にも何か俺を心配するもにかわっていた。 しっかりと俺の手を握ると、俺を立たせようとする。 それに応えるように俺も足に力を入れようとする。 ズキンッ。 「・・・くっ・・・」 頭が痛む。 思わず身体が仰け反ってしまった。 そして、手にも力が入ってしまったので、美奈の手をはなす事が出来なかった。 「きゃ・・・」 美奈は小さい声の後、身体のバランスを崩して俺の方へ前のめりに倒れてしまった。 「ど、どうしたんですか?」 「スマナイ・・・発作が起きているんだ・・・」 「・・・発作・・・・・・」 「最近、夜明けに目覚めると、こういう風になるんだ・・・。手が血で濡れていて・・・息苦しくなって・・・」 「・・・・・・」 「きっと、原因は・・・仕事の所為だな。夜にやる事が多かったからな・・・何時もこの時間帯は血で汚れていた」 「・・・・・・」 「夜明けの光の所為で血が見えるんだ・・・」 人を殺し続けていた所為からか。 やはりその行為に・・・自分がやましいと感じる所があるからか・・・。 それとも、もしかしたら・・・。 「もしかしたら、この発作は俺を・・・戻そうとしているのかもしれない・・・昔の俺に」 そう言うと、美奈は俺を抱きしめた。 そっと、俺の頭を抱きしめた・・・。 「違いますよ・・・きっと、則和さんは変わりたいんです・・・乗り越えたいんです・・・」 「・・・うん」 「だから、大丈夫」 「ありがとう」 「うん」 「・・・美奈・・・」 「ん、なんですか・・・?」 「良い匂い・・・」 「ば、ばか・・・」 少し茶化す。 こちらも美奈の背中に手をまわす。 少し擦り寄るような感じで美奈の胸元に耳を当てた・・・。 心臓の音が心地よかった。 「・・・大丈夫です。きっと、大丈夫だから・・・」 後書き 第2話です。 次も頑張ります。
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