心踊り出すような生き方を 則和編 By KEN
プシュー・・・ガタン・・・ガタンゴトン・・・。 「ふぅ・・・着いたか」 まだ早朝、外の空気は澄んでいた。 「さてと、ここからだ・・・」 俺の今いる場所は自分の故郷。 今、俺が澄んでいる場所とは全然違う場所。 簡単に言えば都会と田舎の違い。 十年ぶりに見るこの街の風景はあまり変わっているようには見えなかった。 自分の心の奥にあったこの街の思い出とそれを元にしてつくったイメージが一致した。 「と、言っても・・・自分ん家は何処にあるかはおぼえてないんだけどな」 やっぱり子どもの頃の記憶は曖昧だった。 改札口を出て見えたのは長い長い坂。 御丁寧な事に未知の脇には名称までつけられていた。 『地獄坂』・・・と。 一瞬だけど、ふざけた名だと思ってしまった。 道に迷った時は交番なのか・・・? 俺は途方に暮れてしまった。 いざとなれば人ん家のインターホンを鳴らしてしまおうであろう勢いだった。 でも、まだ俺はこの途方に暮れる気持ちを味わっていたかった。 だけど・・・ 「ふぅ、迷い過ぎたな」 何時の間にか山に入り込んでいた。 もしかしたら自分はとんでもないほど方向音痴なのかもしれない。 そんな事を悔やみながら足を進めた。 少々勘だったが、墓地あこの近くにあると思った。 昔、自分がここに住んでいた時、この山に入り込んだ事があった。 その時、普段見慣れないものを見た。 石の柱が、何本も建っている場所へ。 同じ事をまたしているとは、自分もあまり成長していないと思った。 太陽が高くあがっていた。 腕時計を見てみる。 結構良い時間になっていた。 「ふぅ・・・」 少し自分の勘と記憶力を誇らしく思った。 この山の頂上までの道のりの半ばにそれはあった。 石でつくった柱が何本も建っている場所に辿り着いた。 何となく別の場所より寒く感じた。 それは、人気が少ない所為か? それとも、心に感じた寒さが俺の身体い伝わった所為か? そう思いながら、墓地に入って行った。 一ヶ所、一ヶ所と石柱に彫られた名を見ながら進んだ。 そして、最も今関わりたかった名を見つけた。 『望月家之墓』と書いてあった。 そして側に小さく父さんと母さんの名前もあった。 ・・・やっぱり死んでしまったのだと実感した。 父さんと母さんが撃たれて、俺が銃を渡された時・・・。 俺は、逃げた。 現実を見るのが恐かった。 雨の中、真っ暗な中、俺は走った。 何処をどう走ったか知らない。 でも、気づいた事は、そこはもう自分の住んでいた場所ではなかった。 その時、自分でも驚いた。 自分にこれほどの体力があるのもそうだけど・・・。 自分はこんなにも非情なんだと・・・。 「おい、坊主!」 「!」 俺の目の前に大柄な男がいた。 「金くれよ」 どうやらホームレスのようだ。 よく見えると拭くの所々に破れた部分を見つけた。 「最近のガキは金持ちだしな、2、3千円はあうだろう?」 にたりとやらしい笑顔。 俺は身震いする。 「お金なんて・・・持ってない・・・」 「そうかい、なら身体検査をして確かめようか?」 手を俺の両肩に乗せた。 嫌な手だった。 馬鹿デカイ手・・・。 「!」 右手に持ってたものを男にかまえた。 「玩具でどうする気だ?」 「・・・」 力を入れて引き金をひいた。 ドン!と言う音がした。 そして、その後男が倒れ掛かってきた。 「ガハッ・・・」 男は血を吐いて絶命した。 さっきの父さんと母さんと同じように・・・。 「!」 「・・・・・・」 思い出してしまった。 目を閉じ、頭を振って忘れさせた。 そして、静かに手を合わせた。 ・・・ゴメンナサイ、僕はこんなに親不孝者になってしまって・・・。 なるべく、悪い人間と認識される人たちを殺してきた・・・。 少しでも自分の罪が軽くなるように・・・。 でも、結局・・・僕は人殺しなんです・・・。 僕は許されるんでしょうか? 今は、たった一人の大事な人を守っています。 それは、自分の罪を軽くするための行為なんでしょうか・・・? でも、それは違うと願いたいです。 その人を好きで、自分がそうしたいと言う風になりたいです。 「あら、珍しいわね」 「・・・?」 人の気配がした。 一人の女性がいた。 歳は、君恵さんと同じくらいだと思う。 優しそうな笑顔を見せる。 「あなた、望月さんの親戚?」 優しい声。 少し安心した。 「いえ・・・あの・・・」 「ええ、何?」 「俺は、・・・息子です」 静かにしっかりと言った。 きっと、父さん母さんを知っている人だろう。 今、俺は息子って言ったのだ・・・。 もしかしたら、この街から恨まれている存在かもしれない。 親を放ってどこかに行ってしまった。 今更・・・のこのこと・・・。 「もしかして、則君?・・・則和君?」 「はい、則和です」 そう言うと、女性は目から涙を流した。 だけど、笑顔だった。 「久しぶりね、則君」 「あっ・・・」 よく見たら見覚えがあった・・・。 「佳奈ちゃんの・・・お母さん?」 「ええ、そうよ」 「ありがとうございました、線香」 「いいのよ、私もあげたかったから」 帰り道、俺は佳奈ちゃんのお母さんと歩いていた。 夕日がもう見えていた。 「それじゃあ、俺はこれで・・・」 「かえるの?佳奈子、会いたがっているんだけど・・・」 少し悩んだ。 だけど、少し居心地と言う物が悪かった。 「スミマセンけど・・・」 「そう・・・仕方ないわね」 俺は、駅に向かおうとした。 ここに来たのは、会いたかったからじゃなくて、見ておきたかったからだ。 この街の風景を自分なりに残しておきたかった。 心の中にこの景色を奇麗に残していたかった。 人に会って苦い思い出をつくるのは嫌だった。 「でも、もう遅いみたい・・・」 「・・・え?」 少し困った顔をした佳奈ちゃんのお母さん。 俺は少し道の先を見つめた。 女の子がこっちに向かってきた。 どうやら、もうこっちには気づいているようだ。 「ゴメンね・・・」 「いえ・・・」 少し、緊張した。 きっと、あの女の子は・・・。 「やっほ〜、お母さん」 「えぇ、お帰り佳奈子」 「それにしても、お母さん、浮気なんかしちゃ駄目だよ」 「ふふ、そんな事を言ったら、あなただってそうでしょ?」 「え?」 「雅君には悪いけど、佳奈子はこの人と浮気するかもね」 「だ、誰が!?」 少し顔を赤くする佳奈ちゃん。 俺は静かに静観していた。 「そ、それよりアンタ誰よ!?」 「俺は・・・」 少し間が空く。 偽名を使おうかと思った。 だけど、佳奈ちゃんのお母さんが目で合図を送った。 やはり正直に言わないといけないらしい・・・。 こっちの、選択権はないようだ・・・。 「俺は、望月 則和だ」 少し心が軽くなった気がした。 「うぅ・・・ぐす・・・っぐ、えぐ・・・」 俺の名前を言ったら、理解するまでに数十秒かかった。 そして、急に涙が流れ出した。 仕方なく、近くに俺の家があったのでそこで休ませる事にした。 どうやって、家に入ったかと言うと、佳奈ちゃんのお母さんが鍵を持っていたからだ。 今まで、時々だが家を掃除していてくれたらしい。 家の中に入るとイキナリ抱き着いて来た。 少し躊躇ったけど、泣かしておくことにした。 優しく抱きしめて。 佳奈ちゃんのお母さんは何時の間にかいなくなっていた・・・。 少し溜息をついた。 こんなところを美奈に見られたらどうなるか・・・? と、少し恐ろしい想像をしてしまった。 「ほら、寒いから今に行くぞ」 小さく頷いてくれた。 だけど、歩いてくれる気配がなかったので抱き上げて、今に向かった。 少し赤い顔をしながら呆然と俺を見上げていた。 居間につくと、ソファーがあったのでそこにおろした。 「なんか飲むか?コンビニに買ってくるよ」 「うぅん・・・いい。それより、ここにいて・・・」 「・・・分かった」 横に座った。 「今まで何処にいたの?」 「あちこち・・・今は、ある場所で世話になっている」 「そっか・・・安心した」 少し重苦しい場になっていた。 やはり再会するのは間違いだったかもしれない。 「雅史は元気か?」 「うん・・・」 「そっか・・・」 どうしようかと悩んだ。 もう電車もない。 ここで一夜を過ごす事になりそうだ。 「則・・・」 「・・・?」 「もう何処にも行かないで・・・。私にはあなたが必要だから」 少し喉が乾いた感じがした。 唾を飲み込む。 「・・・やっぱり、佳奈ちゃんは友達だ・・・」 「え・・・?」 「俺の記憶での君は、あの小学生の頃で止まっている」 「・・・」 「君だってそうだろ?勝手に成長した姿を思い浮かべたんじゃないか?」 「それは・・・」 「ホントに必要な人は別にいるんだ。君が気づいていないだけだ」 心あたりがあるのか顔をふせた。 なんとなく想像はついた。 きっと、彼だろう。 「俺は友達でいてほしい」 「・・・・・・」 「コンビニ行ってくる・・・」 「ふぅ・・・」 溜息をつく。 コンビニで簡単なものを買ってこようかと思ったが、もう少し時間を潰したかったので、スーパーにした。 久しぶりに料理をしようとも思った。 正直さっきの台詞にはぐらっと来たけど・・・。 人い必要とされるということは、やはり嬉しい事だ・・・。 でも、安易な気持ちで変な関係になるのが嫌だった。 彼女だって一時の感情なのだろう。 それ以前に何か自分が同情しているみたいに思えた。 「あら、則君」 「・・・どうも」 「佳奈子は泣き止んだ」 「ええ。・・・もう、良い時間ですし、何かつくろうと思って」 「あら、私がつくるわよ?」 「まぁ、簡単なものですけど・・・久しぶりにしたくて」 佳奈ちゃんのお母さんと話すのも少し躊躇った。 少し、声が出なかった気がした。 「ゴメンナサイね・・・でもね、私の大切な娘なのよ。娘の望んでいる事は叶えてやりたいの」 「はい・・・。でも、それが望まない結果になったとしたら・・・どうするんですか?」 「・・・それでも・・・いいのよ」 「ただいま・・・」 ビニール袋をぶら下げ、家に帰った。 とても居心地が悪かった。 「おかえり・・・」 「あぁ、待ってろ今から簡単なつまみでおつくるから」 「うん・・・」 目を赤くしている彼女。 少し躊躇ったが、普通に接しようと思った。 「則は、料理上手だもんね」 「それは、分からないけど。嫌いじゃないさ」 「私は・・・駄目。手際が悪すぎちゃってさ・・・」 「ん・・・、腕によりをかけるよ」 そういって台所へと向かった。 害す、電気は繋がっている。 それも契約の中に入っているらしい。 「ん・・・これでいいか」 自分なりに良い出来だとおもった 。 思えば最近は料理をしていなかった事に気づいた。 君恵さんに任せっきりだなと実感した。 久しぶりに野菜炒めをつくった。 それに、簡単なスープも。 皿に盛って、居間に持って行った。 「出来たぞ」 「うん、ありがと」 居間にあるテーブルの側にちょこんと座っていた。 彼女の前に野菜炒めをおいた、小皿も差し出す。 「飯・・・いるか?」 「ん・・・今はいいや」 割り箸をパキッと割り、野菜炒めを口に運んだ。 「ん、美味しい」 「よかった・・・」 そう言うと、自分も野菜炒めを食べだした。 「・・・俺はな、君に好きになってもらえる資格はないんだよ・・・」 「・・・何?」 「俺は、ホントは生きていてはいけない人間なんだ」 「・・・」 「非道な事をした。人にあるまじき行為をした」 今も脳裏をかすめるのは死んだ人の表情。 恐怖に脅え・・・、そしてその顔のまま死んでいく・・・。 目を覆いたくなる・・・。 だけど、なおさら鮮明に浮かび上がる。 でも、これは後悔の念なんだ。 きっと、自分が忘れさえないようにつくった枷だ。 きっと、これから抜け出せる日は来ないだろう・・・。 自分でも考えたのだから、仕方ない。 俺は・・・僕はこれからも枷があるんだ・・・。 ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・。 電車が着た。 と、言ってもこれは行きにつかっていた電車なので、のるわけじゃない。 帰りの電車はまだ来ない。 雅史と佳奈ちゃんはまだ俺の家で眠っている。 昨夜、いろんな事があった。 雅史と、ちゃんと話せた。 みんなでパーティをした。 いろんな思い出が残せた・・・。 プシュー・・・。 電車が出発した。 思わずそっちの方を見てしまった。 「!」 一人の女の子が立っていた。 長い茶色の髪・・・。 小柄な身体。 自分の大切な人だった。 「美奈・・・」 「あ、則和さん!」 やはり、美奈だった。 すぐに走って向かい側のホームに行く。 「お前・・・どうして・・・」 「だって、帰ってこないと思って・・・。やっぱり、自分のうまれた場所だから・・・」 「・・・・・・」 「自分のうまれた場所だから、思い出の場所だから・・・ずっとここにいたいのかなって・・・」 「・・・・・・」 「私の事なんて、すぽ〜んって忘れちゃったりして。ここの方が居心地が良くて・・・」 少しさびしそうな目で訴えかける。 少したじろぐ・・・。 「美奈・・・」 そういって・・・俺は美奈を抱きしめた。 少し強めに・・・。 「の、則和さん・・・どうしたんですか?」 少しあたふたする彼女。 周りを確かめようとする彼女・・・。 幸運な事に、ホームには誰もいなかった。 「大丈夫だ・・・どんなに居心地が良くても・・・俺は・・・」 「・・・はい」 嬉しそうに笑顔を見せる彼女。 少し、顔が赤くなってしまったと思う。 「・・・もう、帰るんだけど・・・どうする?」 「いいですよ、連れ戻しに来ただけですから・・・」 少し照れ臭そうに笑いながら彼女は言った。 俺達は、電車に乗り込んだ・・・。 「「則!!」」 二人の声がした。 慌てて振り向く。 そこには、やっぱりあの二人の姿があった。 「雅史、佳奈ちゃん・・・」 「帰るのか・・・?」 「ああ、俺の居場所はここじゃないんだ」 「・・・また、来るよね?」 「・・・・・・分からない」 「手紙送ってもいい・・・?」 「・・・ああ。今度、こっちから送る・・・」 「うん」 そろそろ電車のドアが閉まる・・・。 そうすると、俺はこの街から隔離される。 「そろそろだな・・・」 「うん」 「またね・・・」 二人は、涙を流しながら・・・俺を見送ってくれる。 少し感動した。 「・・・うん、またな・・・」 ドアが閉まり出す。 そして、もう声は聞こえなくなった。 電車がゆっくりと動き出す。 電車が走る。 この街の景色が流れていく。 美奈は隣で寝息をたてている。 やはり、お嬢様なのだろうか? それとも、初めてだからだろうか・・・。 夜行列車はあまり肌に合わなかったようだ。 夜はまったく眠れなかったらしい。 なお、悪いニュースがあるのだが、彼女は両親に何も言わずに出て行ってしまったらしい。 少し溜息をついた。 一緒に謝ろうと思った・・・。 そっと、頭を撫でる。 気持ち良さそうに表情を緩める。 外の景色を見る。 空が高く感じた。 少しぼ〜っと見ていた。 暫くすると目を閉じた。 そして、小さく呟いた・・・。 また・・・会おうな・・・と。 Fin 後書き やっと、完結しました。 なんか、抜けている部分があるのは、気の所為です(笑 そこは、雅史編で書いているので(汗 二度も同じパートを書くのはいいかなって・・・。 感想送ってもらえると嬉しいです。 よろしくお願いします。 KEN
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