輝く想いを胸に秘めて 第六話 犯人なんて居ない by.夢幻の戦士
冬月氏が死んだという話は、瞬く間に島中に広まった。 元々、西南島はそんなに大きな島じゃない。 情報の伝わり方は異常と呼べるスピードで島全土に行き渡った。 そしてここにきて、本土から刑事が来たというのも一つの話題となった。 それはトウジも同じ心境だっただろう。 何せ別件の捜査で島に来てみたら、ここでも殺人事件が起きているのだから。 しかも被害者は日本では十指に入る六分義財閥の会長というではないか。 さすがのトウジもこれには参ったらしく、しばしその場で呆然としてしまったらしい。 島の駐在・青葉は捜査の指揮は取れないというので、 急遽、現場の指揮はトウジが取る事になった。 嵐が通過し波が収まるのは、どう見ても3日は掛かるらしく、 本土から捜査員が到着するまで全権は一時トウジに預けられる事となった。 そして医者であるシンジ・カヲル・きららの三人は、 鑑識が来るまでの間トウジの指揮下に入ることになった。 「しかし、判らん事件やな」 溜息と共に出た言葉は、そのまま現状を表していた。 今、トウジとカヲル達3人は、ホテルの一室にて今回の事件の成り立ちを、順を追って検討していた。 それにつれて、この一連の事件の矛盾点が明らかになってきた。 まず始めに、何故あの夜、六文義会長はあの場所に行ったかだ。 大抵の事ならホテルの自分の部屋で済ますはずなのに、あの日に限ってそうではなかた。 余程人に聞かれたくない話だったのだろうか? 第二に、冬月氏は何故殺されたのか? 彼は少なくとも殺される立場の人間ではなかった筈だ。 多額な借金をしていたのは事実だが、それ以外の事幾ら探しても無かったのだ。 つまり、捜査は最初のうちから暗礁に乗り上げてしまったのである。 「お手上げね」 きららが両手を上げて降参した。 「渚センセ、何か判った事は他にないでっしゃろか?」 「ふ〜む…六文義氏は細長い何かで胸を一突き。冬月氏は心臓麻痺なんだけど、 伊吹さんがスタンガンを持っているのを星野さんが目撃してるしね」 「でも普通、スタンガン程度で人は死ぬか?」 「冬月氏は心臓にペースメーカーを埋め込んでいたのさ」 トウジの質問を事も無げに答えるカヲル。しかしトウジは何のことかさっぱり判らないらしい。 「ぺースメーカーっていうのは、心臓の働きを助ける装置のことよ。冬月氏は心臓を患ってい、 だから電気パルスで正確なリズムを心臓に伝えるペースメーカーが必要だったのよ。 でもこの装置は精密である分電圧なんかに非常に脆いのよ」 「そう言う事さ」 トウジの疑問にきららが答え、カヲルが肯定する。 「ちゅーことはや、スタンガンで冬月さんを殺す事は」 「「十分可能(よ)」」 「やっぱも一度、事情聴取するしかないのー」 やれやれ、といった感じで席を立つ。 「…そういえば、もう一人センセが居ったなあ。碇っちゅうたか、今どこに居るん?」 「彼なら、惣流さんの所だよ…」 「春なのかしら?」 シンジは黙って林檎の皮を剥いていた。 目の前には至極不機嫌なアスカが唸っている。 「む〜」 「はい、剥けたよ。惣流さん、あ〜ん」 パクっ 八等分に切られた林檎にかぶりつくアスカ。すっかり餌付けされてしまったらしい。 林檎の甘酸っぱい味が口の中に広がる。 しかし、アスカの顔が晴れることはない。 何故なら、 「・・・・・・つまんない」 どうやら彼女は、自分がこんな所でじっとしているのがお気に召さないようだ。 「仕方が無いよ、君は怪我人なんだから。大人しくしてないと」 「む〜む〜」 可愛く抗議して見せるがシンジには通用しない。 そんなアスカを見て、シンジはくすくすと柔らかく微笑んだ。 「それにして、今回は難事件ね。動機も不明、容疑者は黙秘、八方塞がりだわ」 アスカはアスカなりに犯人を突き止めようとしているようだ。 自分をこんなにした犯人を、どうしても自分自身の手で捕まえようとしているらしい。 不意に、シンジは言った。 「…これは殺人なんかじゃないよ」 「え?」 「確証はあるんだけど、核心には至ってないんだ…」 人が変わったように離し始めるシンジの迫力に、アスカはただ呆然となった。 翌日。 シンジは関係者を全員、ホテルの一部屋に集めた。 勿論トウジやカヲル達も一緒である。 一介の医者であるシンジが話を始めると聞いて、 何人か不満があるのか先程から顔からシワが取れていない。 「まぁ皆さん、すぐに済みますから静かにして下さい」 「フン、まさか犯人が判ったなんていうんじゃないだろうな」 「まさか」 一同は呆れたとばかりに溜息をついた。 「でも死因は判りました」 その途端、全員の体が強張った。 「まずは伊吹さん」 「は、はい!」 「あの時の状況を出来る限りでいいですから、話しては頂けませんか?」 「え、えーっと、あの日仲人役である冬月さんにこれからの事を聞きに行ったんです」 マヤが友人代表と司会進行役を兼ねている事は、結婚式に出る誰もが事前に知らされていた。 「それで、ドアをノックして中に冬月さんが居るかどうか確かめたんです」 「彼はその時、まだ生きてたんですね?」 「はい、そうです」 シンジは目を閉じて成る程とばかりに頷いた。 そして、目を開けるとはっきりと宣言した。 「冬月さんは殺されたんじゃありません、事故死です。だから犯人なんて居ません」 あとがき 皆さん、お久しぶりです。 今まで書かずにいて申し訳ありませんでした。早く書くと言っておきながら年が明け てしまいました。ごめんなさい。 次回こそは必ず早く書きます(できるかな?(爆)) 次回はいよいよ冬月の事件の解決と、ゲンドウ事件の真相へと迫ります。 ご期待ください。
KENと則和の後書き KEN:ふむ・・・どうなるんだろうこの後・・・? 則和:どうにも・・・こうにも、シンジに任すしかないさ KEN:則的には誰が殺したと思う? 則和:犯人は分からないな・・・まぁ、俺なら簡単に殺れるだろうが・・・ KEN:ほう、どうやって? 則和:んなもん、超長射撃でゲンドウを打ち抜いて逃走。それで、終わり。 KEN:・・・・・・。 夢幻の戦士さんへの感想はこちら
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