心踊り出すような生き方を
第7話


By KEN







「はぁ・・・眠れない」


美奈は自分の部屋のベッドでゴロゴロと寝転がっていた。
美奈は、不眠症の気はない。
むしろ、寝過ぎな方なのである。
その所為で、朝起きれない事がよくある。


「隣に・・・・・・うぅ・・・」


顔を真っ赤にした。
異性とも良く話しているが、こういう気持ちになった人物は今までいなかった。
ましてや、一緒に住む事になったのだ。
今、彼女は凄く緊張しているのだ。


「はぁ・・・水、飲んでこよ・・・」












「あ・・・外に誰かいる・・・セバスさんと・・・」


美奈はたまに夜、外を見る癖がある。
時々、夜に庭の手入れをしている執事の姿を見る事がある。
だが、今日は二人だったのだ。


「・・・則和さん?」


彼女が彼だと分かったのは、彼女にとって運が悪かった。
そう、まさに執事が則和に殴り掛かろうとしている所を見てしまったのだ。


「あ・・・」


思わず目を閉じてしまった。
そして、ちょっと経ってから窓の外の二人を見た。
則和は執事の拳をしっかりと受け止めていた。
美奈は安堵の息を吐いた。


「・・・そ、そんな事より、止めに行かなくちゃ!」


そう言って、玄関の方に向かおうとする。
だが外の様子も見なくてはいけないので忙しかった。
ちょうど玄関の所来るとドアが開かれた。
則和が戻ってきたのである。


「・・・あ・・・」


思わず、見つからないように隠れた。
則和は美奈の姿に気づかなかったのか、知らないふりをしていたのかは分からないが、自分の部屋に戻っていった。


「お嬢様」

「きゃ!・・・・・・せ、セバスさん?」

「はい、見てしまったのですか?」

「・・・・・・はい」

「彼は、ただ私と格闘技の勝負をしていただけですよ」

「え・・・?でも、なんで、こんな真夜中に?」

「それは、お嬢様の様なうら若い女性がいたら緊張してしまうからでしょう?」

「う・・・そ、そうかな?」

「ええ。彼もそう言っていましたし」

「そ、そうですか」


美奈は真っ赤になった。
執事はそれを見て少し微笑んだ。


「それにしても、彼は強いですね。私が手も足も出ませんでしたよ」

「そ、そうなんですか!?」

「ええ、私など足下にも及ばないですからね」

「・・・すごい」


美奈は純粋に関心していた。
執事はその様子を見て、少し安心したように溜息をついた。


「では、お嬢様、そろそろお休みください。明日に響きますから」

「は、はい。・・・おやすみなさい」

「おやすみなさいませ」




























































朝になった。
案の定、美奈は起きる時間になったのだが、未だ眠り続けている。
傍で目覚まし時計がけたたましく鳴っているが、起きる様子はない。


「美奈…起きろ…起きろっ」

「う…ぅん…」


美奈は耳に入ってきた音を入らないように布団をかぶる。
だが、その音は強情で布団を通り抜けて耳に届いた。


「……」


音は暫く経ってから、聞こえなくなり…。
美奈は少し油断していた。
そっと、かぶっていた布団から顔を出す。
しばらくするとぺチャッと音がした。


「!…っ…ぅっ」


顔全体に布状の物が張り付いた。
次第に息がしにくくなる。
すると、…美奈がいきなり起き上がった。


「ぷはぁ!…はぁはぁ…だ、誰がこんな事!」

「…俺だ」

「え…?…え、の、則和さん!?」

「……やっと起きたか」

「うぅ…」


美奈が唸った様子を見て、濡れタオルを美奈の手からとって、部屋から出て行った。
去り際に「もう少し寝相は良くしておいた方がいいぞ」と言った。












「おはよう、美奈」

「おはよう、お父さん」


キッチンに行くと、和利と則和が向かい合って座っていた。
則和はコーヒーを飲んでいる。
どうやら、もう食後のようである。


「よかったわね、今日は朝ちゃんと食べれそうじゃない?」

「え、うん」

「よかったわ、これからは則和君に頼もうかしら?」

「……構いません」

「わ、私はちょっと構うんですけど…」

「……?」

「で、できればもう少し優しく…」

「……なら、あなたがもっと寝起きを良くしなきゃ」

「……はい」












朝の通学路…。
美奈と則和はだんまりと一言も話さずに歩いていた。
みんながその事を見て、少し笑っていた。
からかいの様な、微笑ましいような感じの…。


「あの…」


流石に沈黙に耐え切れなくなったのか…。
美奈は、ぽつりぽつりと話し始めた。


「少し…恥ずかしいですね…」

「…別に…気にする事でもないだろう…」

「……あの…今日…帰り、一緒に帰りませんか?」

「今、登校しているんだろ?」


則和は苦笑して言った。
確かに、美奈にもそれは分かっていたが、なんとなく言いたかったのだ。


「…別に…構わない」

「え、ほ、ほんとですか?」

「あぁ。…だが」

「だが?」

「このままでは学校に間に合わない」

「え…あ、わぁっ!?」


美奈は左手首に巻いていた腕時計を見た。
確かに危ない時間帯である。


「走るぞ」

「は、はい」


二人はそう言うと、走り出した。
だが、二人の生きてきた関係上、どんどんと美奈と則和の間は広がっていった。






「はぁ…はぁはぁ…は、速いです…」

「……このくらいのスピードじゃないと間に合わない」


則和はそう言うと、少しスピードを落として、美奈の手をつかんだ。
一瞬の事で美奈はビクッと前を見た。
茶色の髪の毛が靡き、なんとなくその則和の姿に美奈は顔を赤くした。
美奈自身も髪の毛は茶色なのだが、自分より色の薄い赤みが入った茶色の髪の毛は初めて見た。
なんとなく、その髪の毛に憧れてしまったのだ。
生え際には黒い髪ではなく、そのままの茶色の髪の毛が生えていた。
地毛だと言う事が美奈には分かった。


「…少しスピードを上げるぞ」

「は、はい」


美奈と則和は学校へと走っていった。
その時、美奈は今まで感じた事のない速さを感じたと思った。
少し風に近づいたような気がした。


続く


後書き


ここの章は結構流れは同じでしたね。
でも、ちょっとずつ変化していってます。

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