心踊り出すような生き方を
第6話


By KEN






その日、則和はある大屋敷の門の前に立っていた。
ショルダーバッグを片方の肩に掛けていた。
呼び鈴に手を伸ばす。
ピンポーンとお決まりの音がする。


『どちら様ですか?』

「・・・望月 則和だ」


呼び鈴に応えた人物は女性だった。
声と落ち着いた感じからして、則和よりかなり年上だろう。


『まぁ、あなたがそうですか。・・・どうぞ、お入りになって、今、執事に門を開けさせますから』

「・・・あぁ」


そう言って、インターフォンはうんともすんとも言わなくなった。
暫くするとかなり高齢の男が出てきた。
髪の毛は白髪で、まるで、マンガに出てくるような執事であった。


「ようこそおいでくださいました。私はここの執事です。セバスチャンとお呼びください」

「・・・冗談か、それは?」

「いえ、本名でございますよ」


あまりにお決まりな名前に則和は笑いそうだった。
だが、よく見ると日本人ではなかったので、少し納得した。


「もちろん・・・あなたと同じで別称もありますがね」


執事は穏やかな顔でそう言った。
則和も何事もないように鼻で笑って返す。


「ささ、お入りください。・・・旦那様もお待ちですから」


則和は執事に誘われるがまま、大屋敷の門をまたいだ。












家の中は高価な物で壁などを飾っていた。
それを見て、則和は少し嫌な顔をした。
成り金で良い奴などいないのだからと、彼は思っている。


「ここが、旦那様の部屋です」


そう言うと、執事は大屋敷の部屋のドアを軽く三回ノックした。


「旦那様、望月様です」

『あぁ、入ってもらいたまえ』

「では」


執事はそう言うと、ドアを開けた。
ドアの奥は書斎となっていた。
周りを多くの本棚で囲い、真ん中に大きな机と立派なイスがあった。
そこには、一人の初老の男が鎮座していた。
苦労人なのか少し白髪が目立っていた。


「では、私は失礼します」

「ああ、ご苦労」


執事はそう言うと、書斎から出ていった。
今、ここにいるのは、則和と旦那と呼ばれる大屋敷の主だった。


「では、自己紹介と行こうかな?私の名前は美神 和利だ」

「望月 則和だ」

「あぁ、良く知っている。何回か私達は会っているからね」

「そうだな・・・」


時々、依頼を完了した時に現れる男。
それが、目の前にいる男と則和は実感した。
彼が世界の情報を裏で管理する男、データバンクなのだ。


「君が私の依頼に釣られたのは分かっている、まぁ、元々こちらも君を釣ろうと思ったのだがね」

「・・・・・・で、何故、俺に学校なんかに通わそうとしたんだ?」

「それが、君のための依頼だからだ。・・・それに、たまにはいいだろう?同年代との触れ合いも」

「くだらないな・・・で、お前も見当がついているなら、俺が知りたい情報は何時、手に入るんだ?」

「それは、君次第だよ」

「・・・・・・」

「それと、依頼の内容の追加だ」

「なんだ?」

「ここに住み込んでもらう」

「何故だ?」

「ついでに、ボディーガードとして働いてもらおうと思ってね」

「お前のか?執事が十分に守ってくれるだろ?」

「そうだな。だが、私じゃない。・・・私の娘だよ」


則和は少し怪訝そうな表情をした。


「私の場合、執事には護ってもらう事はできる。だが、いささかお転婆に育ったものでね、外出しがちなんだよ」

「付きっ切りで護れとでも言うのか?」

「まぁ、できればだけどね・・・まぁ、そんなに目を光らせなくていい」

「そうか」

「で、どうだい?」

「・・・・・・情報が手に入るならやろう」

「そうか、では、頼むよ」


和利は満足そうに頷いた。





























「ただいま〜」

「あら、お帰り、美奈」


日も落ちかけの頃、美奈が美神邸に帰ってきた。
美奈の母親、君恵が美奈を出迎える。


「あ、靴・・・誰かお客さん?」

「ええ、ちょっとね」


君恵はそういって、少し笑った。
美奈はその笑顔に首を傾げた。
ちょうど、美奈が廊下を歩いていると奥のドアが開いた。
バタンと言う音でそちらの方に目を向ける。
すると、美奈は少し驚いた顔をした。


「則和さん!」

「・・・・・・美奈?」


そう、美奈の目の前には則和がいたのである。












「じゃあ、私はお茶煎れてきますからね」


君恵はそういって、キッチンへと消えていった。
去り際に「運命の出会いって奴かしら」と言っていた。
和利も仕事があると言って、いない。
ダイニングには則和と美奈だけとなった。
ちなみに、執事も庭の手入れをするそうだ。


「あの・・・どうしてここに・・・?」

「お前の親父さんの厚意でここに住まわせてもらえるようになったんだ」

「え・・・?」

「俺は元々、孤児だからな。身寄りもいないし、この歳になったら施設を出る事になっていたんだ」

「・・・じゃ、じゃあ・・・お父さんもお母さんも・・・?」

「あぁ、死んでる」

「ご、ごめんなさい」

「・・・気にしないでいい。いてもいなくても今の歳になったら変わらない」


則和は平然と言う。
少し、美奈は信じられない境遇と感じた。
確かに美奈の友達にだって親がいない子がいる。
だが、その子には義理だとは言うが、親はいるのだ。


「まぁ、とにかく居候の身になる。・・・迷惑なら話は断るが?

「え!?」


美奈は、少し俯いていたが則和の言葉にばっと顔を上げる。


「この家に子供がいるとは思わなかったからな。それに・・・」


則和は美奈の方を見る。
美奈もその視線気づいて頬を赤くする。


「実際・・・一人暮らしでもいいと思ったからな・・・」

「わ、私は・・・」

「・・・・・・」

「気にしませんよ・・・そ、それに、則和さんって頭良さそうだし、勉強とか教えてもらえそうだし・・・」

「別に・・・構わない」

「なら、いいです!だから、この家にいてください!」

「・・・・・・世話になる」




























































その夜、則和は漆黒の装束を着て屋敷のドアを開けた。
だが、門へと続く道には執事が立っていた。
それを見ると、死神となった則和は目を細めてその執事を睨み付ける。


「・・・どうしても、外に出歩きたいのなら・・・」

「・・・・・・」


執事は片方の拳を前に出し、構えをとった。
死神は構えなどはせず、そのまま執事に近づいて行く。


「・・・たぁっ!」


執事は止まる様子のない死神を牽制した。
死神はそれを片手で軌道を変えて当て身をくらわそうとする。


「くっ・・・」


執事はすぐさま地面を蹴って後ろの方へと後退する。
死神の拳は空を切った。


「・・・死神は鉄砲を使うと聞いたが、素手の方もいけるようですね」

「仕事上、銃の効かない相手がいるんでな」

「ですが、得意な武器は鉄砲なのでしょう?」

「まぁな・・・だが、お前ごとき素手で十分だ」

「そうですか・・・なら、私は全力をもってして貴方様を倒させてもらいます」


そう言って、執事は先ほどとは違い、尋常ではないスピードで死神の懐に踏み込んだ。
死神はそのスピードについて行き、執事の拳を受け止める。
バシッと言う音がした。
執事はそれででは止まらず、さらに蹴りを放つ。
それも、片手で受け止める。
死神は両手、執事は片手片足が使えない状態だ。


「まだまだ・・・」


そう言って、執事は片足で飛んで、その勢いで追い討ちをかける。
その動きを読んでいたのか、死神は執事の脇腹に膝を打ち込む。
バキッと少し鈍い音がした。


「ぐぅ・・・」


死神は執事の最後の追い討ちを避けた。
執事はその場に倒れ込んでしまった。


「み、見事です・・・」

「・・・・・・」

「どうぞ、お行きください。敗者には吠える事は許されないですから」

「・・・・・・そうか」


則和はそう言って、玄関の方に戻っていった。
執事は少し意外そうな顔をした。


「・・・今日は月が明るすぎる・・・大人しく寝るとする」


則和は家の奥へと消えて行った・・・。












「・・・良い子だ・・・だが、それ故に悲しい・・・旦那様・・・あなたは彼を癒す事ができますか?」


続く


後書き


執事のセバスチャンはあんまし強くないみたいです(苦笑
いえ、則和が強すぎるんですよね・・・。
また、流れが変わってしまいました。
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