心踊り出すような生き方を
第5話


By KEN






「はぁ・・・今日もまた会えるかな・・・」


昼に近い学校の教室・・・。
美神 美奈は何かに惚けたかのように溜息をついて何かを考えていた。
それは、昨日の少年・・・望月 則和の事だ。


「・・・そう言えば・・・あのハンカチ奇麗だったかな?」


自分でも驚く行動に出たのは今更ながら実感する。
何故、自分にそれが出来たのかも分からなかった。
だけど、後では少し後悔していていたりする。
とんだ些細な事だ。
手当てのために使ったハンカチは奇麗だったかとか・・・。
もし汚かったら怪我をした所は化膿してないかとか・・・。
考えるだけでいくらでも出てきてしまうのだ。


「はぁ・・・」

「ねぇねぇねぇ、美奈!」

「・・・未幸ぃ?」

「何、惚けてんのよ!ちょっと、今日、転校生が来たの知ってる?」

「・・・?」

「あのね、その転校生・・・昨日の・・・美奈の好きな人なのよ!」

「え!?」


美奈はその時大きく目を開いて驚いた。






























「ね・・・昨日の男のコでしょ?」

「うん・・・望月さんだ」


昼休みになって、美奈と未幸は上級生の教室の方へと足を運んだ。
普通は、先輩後輩の関係上、上級生の教室には下級生は近づけなかった。
だが、彼女達は別格で上級生だってお構いなし・・・とまではいかなかったが、上級生にも二人は人気があるのだ。
可愛いとかそう言うだけではなく、二人とも人当たりが良いのでほとんどの上級生に顔は知られている。
なので、実質、教室に入るときも顔パスだったりする。
何時も一緒にいる亜弥だってそうなのだが、彼女は昼になると別行動が多い。
何をしているかは、予想できると思う。


美奈は、暫く則和の方を見つめていた。
そんな時だ、則和の目が美奈の方も向いたのだ。
美奈は思わず隠れようとしたが、間に合わなかった。


「あ・・・こっち来るわよ」












「・・・・・・よう・・・」

「え、あ、あの・・・こ、こんにちわ」


則和は美奈達の方に来ると軽く挨拶した。
美奈は思わず焦ってしまいしどろもどろに挨拶をしてしまった。
未幸はその美奈の様子を見て笑っていた。


「・・・・・・これ」


則和はそう言うと、ハンカチを美奈に差し出した。
それは、昨日、美奈が則和の怪我を手当てするときに使った物だった。


「・・・血がついていたから新しいのを買っておいた」

「え・・・ど、どうも」


よく見ると、そのハンカチは新しかった。


「あ、あの・・・知ってたんですか?私・・・が、この学校の生徒だって」

「いや・・・別に会ったら返そうと思っていただけだ」

「そ、そうですか」


おずおずとハンカチを受け取って、美奈はそれを大事そうにポケットにしまった。
奇麗に折りたたんであったので、崩さないようにそっと・・・。


「・・・じゃあ、俺はこれで・・・」


教室の方に戻ろうとすると、そこには・・・。


『よう、望月!手が早いな!』

『最初の相手が学校の華だもんよ!』

『それに、美奈ちゃんも満更じゃないって顔だしよ!』


たくさんの出歯亀やら野次馬がいた。
則和はそれを見て溜息をついた。


「・・・・・・昼飯、行くか?」

「え、あ、は、はい!」












則和と美奈は学校の屋上にいた。
どうにも、他に落ち着いた場所がなかったらしい。
美奈の親友の未幸も一緒には来なかった。
未幸も上級生と同じように野次馬になったのである。
二人はそれからも逃げてきた。


「わぁ・・・凄いお弁当ですね」

「・・・・・・そうか?」


二人は少し離れて座っていた。
美奈は則和の弁当を覗き込む。
そこには、色とりどりのバランスを考えられた美味しそうな弁当があった。


「・・・あの、誰が作ったんですか?」

「・・・・・・」


則和は何も言わず、自分を指差した。
美奈はその返事に少し落胆の溜息をついた。


「はぁ・・・上手いんですねお料理・・・」

「・・・・・・人並みだ」

「あの・・・望月・・・さんでいいですか?」

「・・・別に上でも下でも呼び捨てでも構わない。だが、できれば上の名前では呼ばれたくない」

「あ・・・そうなんですか?」

「あぁ・・・」

「じゃ、じゃあ・・・望月さん・・・じゃなくて、則和さん・・・でいいですか?」

「構わない」


則和はそういって、弁当の中身を突つきはじめた。
そして、白飯を一口、口に運ぶ。


「あの・・・じゃあ、私は・・・」

「美神 美奈」

「・・・美奈って・・・呼んでほしいです」

「・・・そうか・・・」


そういって、則和はまた弁当を食べはじめた。
美奈も言いたい事が言えたのか、静かに弁当を食べはじめた。


「あ・・・そう言えば、怪我・・・」

「・・・治った」


則和は怪我をした手を見せた。
少し痛そうに見えるがもう血は出ていなかった。
美奈も話題がなくなったので話し掛け辛くなった。


この後、二人は昼休みが終わるまで何も話さなかった。
だが、美奈には何か充実感があったようだ。


続く


後書き


今回は少し短いですね。
次回は則和が美神宅に向かいます。
則和、少し前回の連載の時より物腰が柔らかかったりします。


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