心踊り出すような生き方を
第4話


By KEN






辺りは暗闇だった・・・。
何も見えない・・・。
右も左も分からない・・・。


だが、死神にはその世界が見えていた。
そう、泣き叫ぶ者達の姿も・・・。
そして、周りに転がっている死体も・・・。


「・・・外れ・・・」


ドンッ


その音の度、人が死んだ。
今の音でまた、一人死んだ・・・。
死神は、何事もなかったように手に持っていた銃を下におろした。
そんな時だった・・・。


ヒュン!


風を切った音がした。
その音に反応して、死神は後ろに飛んだ。


「よう、よく避けたな」

「・・・・・・ここのボスか?」

「あぁ。ったく、餓鬼なのに見事な手際だぜ。コンピューターで建物の制御ルームを占領するなんてな」

「・・・・・・」

「そして、暗闇でコイツらを瞬時に殺る。・・・見事じゃねぇえかぁ!だがなぁ、俺が出てきたからもう許さねぇ」


そう言って、ボスはナイフを振り回した。
死神は、それを避ける。


「・・・やるじゃねぇか・・・流石は死神」

「・・・切り裂き魔か・・・」

「おう、俺は神山 純だ」

「大手の製薬会社の社長にこんな趣味があるとは思わなかった・・・」

「へっ・・・良い薬を手に入れたからな・・・」

「・・・そうか・・・バックは何処だ?」

「さぁな・・・自由の息子かな・・・」

「・・・・・・」


死神は、銃を神山に発砲した。
銃弾は神山の方に奇麗に向かっていった・・・。
散弾銃ではないのだが、銃声は一つしかしなかったのに銃弾は複数だった。
これが、死神の死の鎌だったのだ・・・。
一発までは、どうにかできるが、その後の銃弾は敵を貫くのだ・・・。


「グァッ・・・」

「・・・・・・ちっ・・・」


神山は二発までは銃弾をナイフで弾いたが、三発目を避けそこなった。
だが、仕留めきれなかった。
自分の腕を盾にして致命傷を防いだのだ。


「くっ・・・ここまでの奴なんて・・・利き手が使い物にならないじゃねぇか・・・」

「終わりだ・・・」

「ちっ・・・」


神山はそう言って、何かを投げる素振りをした。
一瞬にして辺りが光り輝く。


「・・・くっ・・・」


死神は思わず目を閉じた。
閃光弾により目が開けれなくなった。


ヒュン


また、風を切る音がした。
その音に反応して逃げるが、死神の左肩に痛みが走った。


「くっ・・・」


どうやら、光の所為で反応が鈍くなったようだ。


「あばよ!俺が目印つけた奴は必ず殺るからな!絶対殺しに行くからな!待ってろよ!」


神山はそう言って、この場からいなくなってしまった。
死神は、気配がなくなったのを感じ、肩を抑えた。


「く・・・」












「ここか・・・」


死神は社長室にいた。
そこで、パソコンを弄っていた。
神山の居所を捜そうとしているようだ。


「・・・美神 和利・・・データバンク・・・」


その時、パソコンの誤作動で人物データのファイルが出た。
男の顔写真が出ている。
これは…あの時…。




























































「・・・・・・はぁ・・・」


則和は溜息をついた。
彼は貴重な睡眠時間を削って何時もとは違う場所に今、いるのだ。
朝の学校・・・それは、彼にとって新鮮だった。
だが、別の意味で気持ちをだるくさせていた。












「やぁ、君が新しい転入生だね?はじめまして、保田だ」

「・・・よろしくお願いします」

「ははは、緊張しなくてもいいさ」


則和が最初に向かったのは、職員室だった。
そこには、数名の先生と、この保田と言う教師がいた。
保田は、パンチパーマに何やら結構危ない感じがする。
まるで、最近の教師ドラマの主人公のようだ。


「じゃあ、君の担任を紹介しよう・・・エイミー先生だ」

「はじめマシテ・・・エイミー・ベス・カークランドです。Nice to meet you」

「望月 則和です・・・Nice to meet you too」

「じゃあ、ワタシについてきてクダサイ」


エイミーは、則和を手招きする。
則和はそれについていく。












学校の廊下は朝の日差しが当たっていて、何となくやわらかな感じがした。
想像した、角張っていて暗くて固い感じがした。
学校とはそんな所だと思っていた。
やわかく、優しい感じなどはしないと則和は考えていた。


「ここが、アナタの教室デス」

「・・・・・・」

「じゃ、はいりましょう」

「はい」






教室には、たくさんの生徒がいた。
今日は何時もと違うようだ。
・・・則和の登場によって生徒達は前方の黒板の方に視線が釘付けなのだ。
則和は、みなの視線を感じて少し肩身が狭い思いをしていた。
やはり居辛い感じはするだろう。


「今日から、みなさんと一緒に勉強する事になった望月 則和君デス」

「・・・望月 則和です」


則和は小さく頭を下げた。
だが、その簡単な挨拶は生徒達にとって不満だったらしい。


「せんせ〜い、質問していいですか?」

「ええ、いいデスよ」


一人の女子生徒が手を挙げた。
黒髪のストレートだった。


「趣味とかはなんですか?」

「読書」

「じゃあ、好きな女の子のタイプとかは?」

「・・・ない」

「そうですか、あ、後、誕生日は?」

「六月の十一日だ」


女生徒は、その答えに満足したのかもう質問はしなかった。
・・・声を出しては・・・。


『あなた、死神でしょ?』

『・・・さぁな・・・お前こそ誰だ?』


彼女は口元を小さく動かしていた。
則和はそれに反応して、彼女の言っている事を読み取った。
二人のとっている会話方法は口話・・・別名『読唇術』と呼ばれている。
名前の通り、唇の動きで相手の言っている事が分かる方法だ。
耳の聞こえない障害者が使う手話とは別の会話手段なのだ。


『あたし?あたしは、サンタクロースよ』

『・・・盗人か』

『えぇ、俗人にはそう呼ばれているわ。以後お見知りおきを』

『なんで、お前がこんな所にいる?』

『それは、お互い様でしょ?あたしは、ここが身を隠すのに適している感じたからよ』

『・・・・・・』

『それで、そっちはどうなの?』

『依頼だ』

『そう、あなたって報酬問わずに誰からでも依頼を受け付けるって言っているものね』

『・・・』

『それも、完璧な手口で』

『ああ』

『今回の殺人事件もあんたがやったんでしょ?』

『あぁ』

『それも、製薬会社とか政治関係、人体実験を強く行なっている所・・・なんか、あるの?』

『別に・・・お前ごときが知っていても関係のないものだ』

『へぇ・・・ま、いいわ。これからよろしくね。良い情報が入ったら教えてあげるわ。モチロン、有料で』

『それは、どうも・・・』

「じゃあ、こっちの席に行ってください」

「はい」


則和はエイミーに席を指示された。
それに従い則和はそこに座った。
その間も少しそのサンタクロースと名乗る少女の方を見ていた。


『あたしの名前は那珂沢・・・那珂沢 詠子だから。よろしくね望月君』


続く


後書き


もう、すぐから詠子の正体をばらしました。
なんか、ほんとに流れが変わってきました。
でも、なんとなく前回の時より上手く纏まっている感じがするのは気の所為でしょうか?
みなさん、新・心踊り出すような生き方に感想を・・・。

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