心踊るような生き方を 第3話 By KEN 「んふふぅ・・・」 「おはよう美奈ぁ・・・って何よあんた・・・気持ち悪い笑いかたして・・・」 学校のある教室で、その少女は不気味に笑っていた。 魔女のような笑い声で、少し不気味に見える。 「あ、未幸・・・な、なんでもないよ」 「なに言ってるのよ・・・何か企んでるような何処かへトリップしているような笑い方しちゃって」 「え・・・そんな事してた・・・?」 「うん」 未幸と呼ばれた少女は、目を細めてその少女を見つめた。 何か疑わしい目つきである。 少女も、未幸には弱いのか、少し固くなっている。 「まぁ、美奈の夢見症は今に始まった事じゃないけどね・・・」 「むぅ・・・未幸に私の何を知っているのよ?」 「初めての幼稚園ではいてたパンツの色」 「う・・・うぅ・・・」 美奈と呼ばれた少女は、静かに唸った。 未幸は勝ち誇った顔をして、美奈を見た。 「ま・・・長年付き合ってきた仲だからね、大方、好きな人でも出来たんでしょ?」 「え、う、そ、そんな事ないよ・・・」 美奈は未幸の言葉にビクッと震えた。 どうやら図星らしい。 「ほれほれ、早くゲロッちゃった方がいいわよ」 「・・・・・・」 美奈はそっぽを向いた。 そんな時だ・・・。 「美奈ちゃ〜ん、未幸ちゃ〜ん!大変、大変!事件だよ〜!」 「あら、亜弥・・・朝から騒がしいわね」 「そんな場合じゃないよ、近所で殺人事件があったんだよ〜!」 「え、・・・またあったの?」 美奈達の住んでいる場所では、最近、不可解な殺人事件が起きている。 手口は全部一緒で、同一犯だと思われているが、被害者の関係はバラバラだった。 全ての被害者には、殺される動機などはないとニュースではやっていなかった。 そして、被害者には共通点はなかった。 その所為で、警察の捜査は難航している。 「これでもう、5件目よね・・・」 「うん・・・最近、治安が悪いよね・・・」 「あぁ・・・今度、誰が狙われるんだろう・・・まさか、私・・・?」 「な、わけないでしょ・・・」 「うん、そうだね・・・」 「うぅ・・・」 亜弥は、二人に相手にされず拗ねてしまった。 その様子を見て、二人は安堵の溜息をつき気持ちを入れ直した。 「ま、でも・・・一つ被害者に共通しているのが・・・」 「え、何、未幸ちゃん?」 「ん?・・・いや、共通しているのは、偉い人とか、金持ちばっかじゃん」 「あ、そう言えばそうだね・・・」 美奈は納得したように頷く。 亜弥もすっかり関心している。 「ま、そう言う事であたし達には何の関係もないけどね」 「そうだね〜、はぁ〜、安心した・・・」 「あはは、亜弥ちゃんたら・・・」 「えへへ・・・」 「あ、そう言えば・・・美奈、さっきの話の続きよ」 「え・・・あれ?」 「そう」 「未幸ちゃん、さっきの話って何?」 「んぅ?・・・美奈に好きな人が出来たのよ。さっきから変な笑いかたしててさ、少し怖かったんだぞ」 「ち、違うよ・・・そんなんじゃ・・・」 美奈はないとは言い切れなかった。 その反応に未幸は満足したのか、さらなる問い詰めをした。 人間、中には気になれば気になるほど謎を解き明かしたくなる人物はいる。 未幸はそう言うタイプの人間だった。 何せ、この三人の中で一番好奇心が強い。 「否定しきれないわね・・・ほら、どうなの!」 「・・・・・・・・・うぅ・・・」 「美奈ちゃ〜ん、教えてよ」 「・・・・・・できた・・・」 美奈は真っ赤になって、下を向いて小さく呟いた。 未幸と亜弥はその返事に満足したらしい。 「へぇ・・・美奈もお年頃ねぇ・・・で、誰よ誰?」 「三年生の椎名先輩?・・・あ、男バスの木更津先輩?・・・それとも・・・」 「・・・・・・分からないの・・・」 「え・・・?」 美奈は下を向いて喋ったので声が聞き取りにくかった。 そして、その答えにも未幸と亜弥も戸惑ってしまった。 「分からないって・・・」 「うん・・・あ、あのさ・・・この間、未幸とコンビニ行ったじゃない?」 「あ、そうね・・・そん時、美奈ったら人とぶつかっちゃって尻餅ついてて・・・その時・・・」 「うん・・・立つときに手を貸してくれた人」 「・・・その人って・・・知らない人じゃない、あんた名前も知らないんじゃない?」 「・・・そ、そうなんだけど・・・」 「でも、ロマンチックじゃん・・・マンガみたいに上手く行ったらいいよねぇ〜」 「そうね・・・『マンガみたいに』ね・・・」 「うぅ・・・」 未幸のキツイ言葉に美奈は小さく唸った。 未幸も応援したかったのだろうが、まさかそんな人を好きになるとは思わなかった。 地球には、たくさんの人がいるように、この街にもそれなりの人口がいる。 だから、知り合いでもない人と彼氏彼女となれるのはかなり可能性は低い。 「で、でも・・・昨日だってその人に会ったんだよ!」 「へぇ・・・何処で?」 「廃マンションの近くにある小さな公園で・・・あ、私、その人とベンチ一緒に座ったんだよ」 「・・・ふ〜ん・・・で、その人は反応あった?」 「・・・う、うん・・・私がまたその人とぶつかっちゃって、手を貸してもらったの・・・」 「反応は?」 「・・・うぅ・・・別に何にもない・・・後で走って逃げちゃったし・・・」 「はぁ・・・馬鹿ねぇ、その時名前聞くなりなんなりすればよかったじゃない」 「そんなの出来ないよ」 美奈は昨日行った、小さな公園に向かっていた。 公園の近くには美奈が言ったように廃マンションがあった。 言い換えるとそれしかなかった。 後は並木通りぐらいだ・・・。 「・・・ねぇ、何でついてくるの?」 「いいじゃんいいじゃん、たまには酒の肴になりなさんな」 「・・・何気に人が増えているし・・・」 後ろを見ると、未幸、亜弥の他に二組の少年少女がいた。 それを見て、美奈は溜息をついた。 その様子を見て、一人の少年が言った。 「まぁ、美神も溜息つくなって。・・・もしかしたら、ものすげぇ悪い奴かもしれないだろ?そん時は守ってやるから」 「そうだよ、やっぱり外見と中身って一致しない事って多いし」 「はぁ・・・」 美奈は小さく小声でそれは君たちだよと言った。 確かに、二人の少年は外見と中身が一致していなかった。 一人は、大柄で髪の毛を真っキンキンに染めていて、いかにも不良って感じにリングピアスを何個もしていた。 もう一人は、その反対で、堅物と言う感じがする。 「おう、良い事言うねぇ広夢〜」 「そ〜いう俊樹だって」 俊樹と広夢は、見かけによらずお節介なのだ。 それは、人が良いと言うわけじゃなくて、性分だ。 あるいは、好奇心が手伝っていると言う部分もある。 「もう・・・邪魔、しないでよ」 「はいはい、分かってますって、ねぇ俊樹・・・「しっ・・・」・・・な、なんだよ?」 「・・・あそこ・・・」 俊樹はマンションの方向を指差した。 みんなの視線がそちらの方を向く。 マンションからは、一人の少年が出てきた。 「あ・・・昨日の人だ」 「マジ?・・・すげぇなぁ、偶然がこうも何回も続くなんて」 「でも、あの人、あんなとこで何しているんだろう?」 少年は、薄めの黒のジャケットを着ていた・・・。 その下には白のワイシャツで下は灰色のズボンをはいていた。 「や、やべ・・・隠れるぞ・・・」 俊樹の言葉にみんなは反応して、物陰に隠れた。 美奈も咄嗟についていってしまう。 別にそんな事をしなくてもいいのだが、なんとなくそうなってしまった。 「へぇ・・・結構カッコイイじゃん。美奈ったら結構面食いね・・・」 「むぅ・・・そ、そんな事ないもん」 美奈達は、その少年の後ろをついていった。 気づかれないようにかなり距離は空いているが・・・。 「あ・・・珍しいな、滅多に人の通らない道なのに、あそこに誰かいる・・・」 「そうね・・・なんだか、ヤバイ雰囲気しない?」 「・・・もしかしたら、不良の巣になっているかもしんねーなー」 「・・・なら、なんで刈川君は知らないの?」 「俺は一匹狼だからな」 「・・・何言ってんだか、彼女持ちで一匹狼って・・・」 「ば、この野郎!」 「あ、あの人大変だよ、俊樹!」 前を歩いていた少年は、何時の間にか数人の男達に囲まれていた。 「か、刈川君・・・」 「おう、行ってくる・・・」 俊樹は、空手をやっている。 腕はそれなりの心得があり、喧嘩の経験も手伝って学校では最強の名を誇る。 俊樹もそれを売りにしている所があり、そーいう部分の話になると自身満々で話したりする。 『グヒャッ!?』 『グェ・・・』 『ギャァアア!?』 「え・・・?」 美奈達の心配を余所に少年は、男達を一蹴していた。 殴り掛かってくる男には、さっと左右に避けて当て身をくらわす。 何も出来ない男には、蹴りを頬にくらわした。 ほとんど、一撃必殺である。 囲んでいた男達は、少年の周りに倒れていた。 「すげぇ・・・アイツ、俺より強ぇって・・・」 「・・・・・・あ・・・」 少年は、くるりと男達に背を向けて歩き出していった。 美奈がそれを見たのは偶然だった。 少年の姿に見とれていた所為かもしれない。 美奈は少年の元へと走り出して行った・・・。 「あ、美奈!」 「・・・だ、大丈夫ですか!?」 「・・・・・・お前、昨日の・・・」 「そ、そんな事より・・・腕が・・・」 「・・・・・・あぁ、これか?ナイフ・・・持っていたからな」 「えっ!?」 少年は、昨日と同じように興味なさげに美奈の言った腕を少し上に挙げた。 ジャケットが切り裂かれ、手の方にも血が流れている。 「・・・大丈夫だ。別に痛くもない・・・」 「そ、そんな事ないに決まっているじゃないですか!手・・・貸してください!」 美奈はポケットから白いハンカチを取り出す。 それで手にまで流れた出た血を拭き取る。 「痛っ・・・」 「やっぱり、痛いんじゃないですか!」 そう言って、ジャケットの袖を捲り上げて、傷口の所にハンカチを巻き付ける。 気休めだけど、汚れてない所を傷口にあてる。 だが、暫くすると血が滲んでくる。 「あ、あの・・・うちに来てください、手当てしますから・・・」 「あ、嫌・・・別にいい・・・」 「でも・・・」 「大丈夫だ・・・・・・じゃあな・・・」 そう言って、少年は美奈に背を向けて歩き出した。 呆然としていた、未幸達も美奈の元へ近寄ってきた。 「・・・あ、あの!」 美奈は大きな声で制止の言葉を言った。 少年は、その言葉に立ち止まる。 「私・・・美神 美奈っていいます!」 「・・・・・・そうか」 「あ、あの・・・お名前は・・・」 「・・・・・・望月 則和・・・」 そう言って、少年・・・則和は歩き出した。 美奈はその後ろ姿を見送っていった。 続く 後書き 俊樹は痛い思いをしなかったです。 まぁ、そのおかげで則和は怪我をしてしまいましたけど。
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