心踊り出すような生き方を
最終話


By KEN






「私達って…五日も眠ってたんですか?」

「まぁね…ちょっと、冷や汗が出たよ。ほんと、和利様と君恵様に殺されるかと思ったよ」


数分経つと、立川が則和の病室に入ってきた。
ちょうど、則和と美奈が二回目のキス…と言うところになりそうだった。
とても不自然に美奈は則和から離れていった。
立川はそれを見ると、声をあげて笑いたくなった。


「五日も経った事だし、君の怪我も大分良くなっただろう?」

「…まぁまぁな…まだ、あちこちが痛いな…」

「そうか…まぁ、日常生活も少し難しいかもしれないけど、送れないって訳じゃないから」

「そうか…」

「退院するかい?」

「……美奈は、どうした方がいい?」

「私は…則和さんが大丈夫なら…家に帰ってきて欲しいな…」

「じゃあ…させてもらいます」

「ん…じゃあ、車椅子あげるからさっさと帰った帰った。眠っている二人には、言っておくから」


立川は病室に備え付けてあった車椅子を則和の前に置く。


「二人とも、着替えたら出てっていいから。あぁ、二人の着替えは君恵様が持ってきてくれたから」


そう言って、立川は部屋から出て行った。
則和は、それを呆然と見ていた。


「あの…着替えてきますから」

「ああ」

「則和さんは…一人で大丈夫ですか?」

「…大丈夫だ」


美奈が出て行くと、則和はゆっくりと立ち上がった。
身体があちこち痛むが、我慢できないほどではなかった。
服を脱ぐと、包帯を身体にあちこち巻かれた姿が見えた。
少し、溜息を吐くと、着替え用の服を着る。


「また…酷くなったな…」





























































「大丈夫ですか?」

「それは、こっちだ。…お前こそ疲れないのか?」


車椅子を押している美奈が何度も繰り返す言葉。
則和はその言葉がくすぐったくてしょうがなかった。


「公園とか寄りません?」

「…構わない。登校拒否の学生に見られてもいいならな」

「むぅ…」

「嘘だよ…俺も行きたい…」

「うんっ」












「はぁ…やっぱり、誰もいませんねぇ…」


公園には誰もいなかった。
美奈は、則和の座っている車椅子を公園に一本だけ生えている大きな木の隣にとめた。
空は、季節柄珍しく晴れていた。


「そうだな…眠くなりそうだな…」


則和は目を閉じた…。


「わわわ!駄目ですよ…眠っちゃ!」

「冗談だ…」


そう言って、意地の悪い顔で笑った。
そして、則和は車椅子から立ち上がる。


「あ、まだ…」

「大丈夫だ…少しくらいならな」


少し痛みの刺激が来たが、則和は構わなかった。


「俺は…これから、どういう風に生きていけばいいんだろうな…」

「…則和さん」

「父さんと母さんと分かり合えた瞬間に迎えた別れ…その原因をつくった男を殺した。…だから、もうする事がないんだよな」

「……」

「一つ、大きな事を成し遂げると、心にぽっかりと穴が空いちまった。…なんて言うか、空虚感だな」


美奈は則和の手を握る。


「…もちろん、お前の事は…好きだと思う。…でも、それだけだ。…それしかない…やりたい事もない…」

「大丈夫ですよ…」

「ん…?」

「これから、見つけて行けば。ほら、私だって、何を将来やりたいかなんて分かってません」

「……」

「私達はこれからなんです…二人で見つけていきましょう」

「そう…だな…」


則和は、美奈を見つめる。


「なんですか?」

「今、やりたい事…一つ見つかった…」

「え?」

「さっきの続き」

「……もぅ…」

「駄目か?」

「いいえ…実を言うと…私も」


えへへっと美奈は照れ隠しで笑った。
則和も笑って、美奈の頬に片手を添える。
もう一方の手は美奈の腰の方に回す。


「慣れて…ます?」

「二回目」


二人はここから始まった。


終わり


後書き


やっと、加筆修正版を書き終えました。
ちょっと、疲れました(汗
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