心踊り出すような生き方を
第13話


By KEN






カツーン…カツーン…。
大理石の廊下を不規則なリズムで歩く足音。
則和は、身体を引きずって奥の部屋を目指した。
彼の意識は、朦朧として、途切れそうとなっていた。


「はぁ…はぁ…」


暫く経つと、奥の部屋に続く部屋を見つけた。
そのドアを則和は力一杯蹴飛ばして、開けた。
そこには、一人の五十代ぐらいの男が立っていた。


「久しぶりだね、望月 則和君」

「やはり…あんたか」

「そう、下落合だよ。君の両親を殺したね」


男はニヤリと笑って則和を見た。


「大きくなったね。君がここまで大きくなったとは、予想外だ」

「……」

「まぁ、君の命が危なそうなのでそろそろ始めようか、さぁ…私を殺したまえ」

「な…どういう意味だ?」

「別に、言葉通りだよ。私の自由は死の先にある」

「……」

「なんの柵もない、自由だ」

「なら、勝手に死ねばいいだろ」

「それは、出来ない。私の死とは、君によって下されるのだから」

「なんで、俺なんだ!」

「なら、君は私を殺さないのか」

「…っ」

「さぁ…殺したまえ」


銃口を向けるが…引き金に力がこもらなかった。
則和は、今、恐怖を感じていた。
男が狂っていることに。


「安心したまえ…私の一人が死ぬだけだからな」

「一人?」

「そう」


指をパチンと鳴らして、部屋に照明がついた。
そこには、目の前にいる男が8人眠っていた。


「私は、自由について研究している。私、一人では足りなくてね。だから、私達にしたのだよ」

「…く、狂っている」

「そうさ。だから、君に私を殺して欲しいのだよ。この中の一人から消してほしいのだよ。さぁぁぁ!早く!!」

「……う…ぁあぁぁぁぁぁあっ!!!」


則和は銃を辺り構わず撃った。
何処に当たるかは構わず…。
まず最初に下落合と名乗っていた男が死んだ。
そして、次々に8人を殺していく。
その間に、則和は目の前が真っ暗になっていった。




























































「見つかったか?」

「いえ…この近辺にはいないようです」

「そうか…」


和利とセバスは重苦しい雰囲気の中にいた。
則和の行方は依然として分かっていない。
そんな時だ、一通の電話がかかってきた。


「…私だ。…立川君?どうしたんだ?」

『サンタから厄介なプレゼントを貰ったんですよ。受け取り人は和利様と彼女は言っていました』

「!…そうか、今すぐ行く!」

『それと、出来ればお嬢様も連れてきて欲しいです』

「美奈を?」

『はい。もしかしたら、彼女の力が必要になるかもしれません』

「……分かった」












「あら…電話だわ」


病院では、美奈と君恵が話していた。
昨日よりは、美奈は容態がよくなった。
君恵に笑いかける余裕も出来ていたようだ。


「もしもし…あら、あなた。…えぇ…ええ……分かったわ」


電話を元の場所に戻して、美奈の方を見た。
美奈は、首を傾げて君恵を見る。


「どうしたの?」

「則和君が見つかったわ」

「え!本当!今、何処に!?」

「立川先生のとこよ…お父さんがあなたにも来て欲しいみたい」

「うん!今すぐ行く!」

「でもね…彼が今、危険な状態なのを理解していてね」


君恵は真剣な顔で美奈を見つめる。
その顔を見て、美奈は少し息を呑んだ。


「…どうしているの?」

「…もしかしたら、帰ってこれないかもしれない」






























「ふぅ…サンタさんはプレゼントをくれるだけかと思ったんだけどな」

「何よ、あなたには一番のプレゼントでしょ?ここまで傷ついて生きている人間を治療できるんですもの」

「まぁ…そうだけど」


眼鏡をかけた、若い男は頭を掻きながら言った。


「流石に、ここまでボロボロだとは思わなかったよ」


そして、彼は則和の身体に手をのせた。
その部分が金色に光る。
則和の怪我が少しずつふさがっていく…。


「…軽傷に持っていっても…全体的に見れば重傷なんだよね。…こりゃ、彼の生きる力を信じるしかないよ」

「そうね…」


詠子は、少し重い声で応えた。
彼女は考えていた、もしかしたら彼は死んでしまうと感じていた。
生きる力がないと感じた。
もう、彼には生きる理由がない…。
もしかしたら、という可能性を試すまでは結果がわからないが、可能性が低いことには変わりない。


バンッと立川と詠子がいる部屋のドアが勢いよく開かれた。
和利、君恵、美奈が入ってきた。
それを見て、詠子は少し表情に余裕が見えた。


「…立川…どうだ、彼は?」

「…危ないですね」

「則和さん…」


美奈は、則和の近くに寄って彼の手を握る。
彼の手から、何時もの力強さは感じられなかった。


「…みなさんにお伝えしなくてはいけないのが、彼はもう目が覚めることはないでしょう」

「……」

「そんな…そんな事、悲しすぎるわ」

「則和さん…」


立川の言葉を聞き、美奈は震えだした。
詠子は、そっと美奈の肩に手を置いた。


「ただ…一つだけ目を覚まさせる方法があります」

「…な、なんですか!」

「…だから、お嬢様に来てもらったんですよ」

「私?」

「そう…少なからず、彼は…あなたには好意を持っていたと、私は思います」

「…まさか…立川」

「ええ。…お嬢様の心を彼の心の中に送り込むのです」

「私の…?」


少し呆然としていたが、美奈はそれが、立川には可能だと思った。
彼は、小さな診療所をやっている身だが、大病院から手術の執刀医に選ばれる腕だ。
だが、彼は、藪医者と世間ではされている。
それは、彼の不思議な能力で身体を癒す方法の所為で。
手を傷ついている部分にのせるだけで、傷が癒える。
非科学的な方法で治療をするので、彼は医者でも異端の医者だった。


「ええ…最も、藪医者の僕を信じてくれればの問題ですが」

「そんなっ!私は…先生を信じてます」

「…二度とこの世界に帰れなくてもですか?」

「え?」

「…可能性として、彼の心の闇に取り込まれてしまうかもしれません。だから、帰れる保障はありません」

「……」

「それでもいいですか?」


和利が美奈に近づいて言う。


「お前が、…則和君のことを大切な人だと思っているなら…信じているのなら行くことを許す。違えば、別に行かなくていい」

「お父さん」

「お前が行きたくなければ、私が行くだけだ。最も、彼が私の事をどう見ていたか分からないがね」


和利は則和を見つめる。
その視線は、とても温かかった。
まるで、自分の子供のように見つめていた。
美奈は、少し羨ましく感じた。


「お父さんは、どうして則和さんを私達の家に来させたの?」

「…彼の両親とは友人だったし、個人的に助けたかったのさ。偽善でもなんでも、彼を悲しい道から救い出したかった」

「…そう。…それさえ、聞ければもう、疑問はないかな」


美奈は笑顔を和利に向ける。
そして、すぐに真剣な顔になって、立川の方を見る。
君恵はそれを、見守るように見つめていた。


「先生…私…行きます…ちゃんと、連れて帰ってきます」

「…そうか」

「美奈…気をつけてね」

「大丈夫だよ、お母さん。だって、則和さんが私を傷つける訳…ないもん」


続く


後書き


やっと、終わりが見えてきました。
○○パートも書かないといけないかしら?(爆

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