心踊り出すような生き方を
第12話


By KEN






カツーン…カツーン…大理石の床の上を歩く音。
足音は二つ。


「さ…ここです」

「……俺に何をやらそうとするんだ?」

「ちょっとした余興ですよ。何、入ってください」


則和は前へと踏み出す。
扉の奥の部屋には、広い造りになっていた。


「よう、久しぶりだな、死神ぃ!」

「……神山とかだったな…」

「あぁ。利き腕のお礼させてもらうぜ」


神山はにやにやと笑いながら言った。
確かに以前とは違う雰囲気がした。
よく言えば、何かを超越、脱皮したような雰囲気。
もう一つは、精神に異常をきたしている、と言う事だ。


「そろそろ、殺らさせてもらうぜ!死神!死ねぇ!」


ドンッ…と則和は銃弾を発砲した。
その銃弾は神山の額に命中した。


「な、なにぃ!?」

「お前は、煩すぎだ。そして、隙が多い。なんで、前に逃したか不思議だ」

「ぐ…ぐぁ…」

「……」


神山はうめき声を小さくあげて、絶命した。


「おい!お前ら、Sons Of Libertyとやらは、この程度の組織なのか!?」

『見くびってもらっては困りますね』


部屋にあった、小さなスピーカーから男の声がする。
そして、またドアが開いた。
仮面を被った男が入ってきた。


「だから、余興と言ったでしょう?これから、私と対戦してもらうための準備運動ですよ」

「……」

「申し送れましたが、私はSons Of Libertyの幹部No.2、風のキラです」

「……」

「ま、今はこの組織を改革したばかりなので、幹部も私ともう一人しかいませんがね」


キラはくっくっくと笑う。
その様子に則和は苛ついた。


「では…行きますよ!」

「……っ」


キラは則和に向かって突撃していった。
そのスピードは目に追えないほど素早かった。
ドカッと則和の身体に衝撃が走った。
鳩尾に打撃が命中したようだ。


「な…!?」


則和は、目も身体も反応できなかった。
何時の間にか、尻餅をついていた。


「どうしたんですか、油断してんですか?」

「く…」


銃口をキラに向けて素早く発砲する。
だが、その銃弾はキラに当たらなかった。
素早く則和は立ち上がって、前に走る。
真っ直ぐと…。
目指すは、部屋の角…。


「行かせませんよ!」


キラの声とともに、則和の背中に激痛が走る。
だが、則和は歩みを止めない。
ナイフが、深く食い込む…。


「…ぐ…ぁ…」

「なかなか、根性ありますね。……ですが、あなたは死ぬ」


はぁはぁと、則和は激しく呼吸をする。
力一杯に刺さったナイフを引き抜く。


「まぁ、ハンデとして角に行かせてあげますよ」

「……く…」


部屋の角に背を預けた。
キラは、依然と変わらずニヤニヤと笑っている。


「行きますよ!」


キラはとんでもないスピードで則和に突っ込む。
則和は目を閉じる。
視覚ではなく聴覚でキラを捉えようとする。
地面を蹴る音が近づいてくる位置、方向に身体を瞬時に向ける。


「目なんか瞑っていていいんですか?首が落ちますよ」

「……」

「どうしたんですか?目を開けることも『ドンッ!』…なっ!?」


キラは空を仰ぐように倒れた。
則和はふぅ…と息を吐く。


「お喋りなオカゲで居場所がわかった」


ナイフで切りつけられた部分を押さえる。


「出血が酷いな…」


他人事のように言うが、少し則和の声が震えた。
キラの言葉は嘘ではなくて、則和は恐怖を感じた。
自分が死ぬと言う恐怖。
それは、彼にとって初めてのものだった。
恐怖、喜び、悲しみ、怒りを排除してきた彼。
そうしなければ、人は殺せないから。
殺した後に来る震えを感じたくないから。
彼はそれを排除してきた。
最も、身体を硬くする感情…恐怖。


「そうですね…喋りすぎましたね」

「……生きていたか」


キラはゆっくりと立ち上がった。
パラパラと仮面が割れ落ちる。
真っ赤、紫色の目…どうみても普通の人間ではなかった。
キラは額から血を流していた。


「…東部の怪我は嫌ですね。血が酷く出る」


傷口を拭いながらかれは言う。


「流石ですね。声で居場所を見つけるなんて」

「それは、こちらも同じだ。瞬時に急所を避けるなんてな」

「まぁ、これでも幹部ですからね」

「……お前たちの目的はなんだ?」

「自由を求める組織です。人にはそれぞれの自由を求める想いがあります」

「…」

「君は自分を絡める鎖から逃れる先に手に入れることが出来る自由」

「……」

「そして、私は死ぬ恐れからも逃れる先にある自由。それが、私の理想の自由です」

「…人はいつか死ぬ」

「どうでしょう?現代の医学では不可能ですが、何時か不老不死が可能になると思いますよ」

「だが、今じゃない。お前より何世代も先」

「いいえ。何世代も前から可能でした。私達、組織は見つけたのですよ。その不老不死の方法を」


キラはにやりと笑って、懐から何か錠剤のようなものを取り出した。


「昔の医学と現代の医学の結晶ですよ。一定の人は不老不死になれる」

「…一定?」

「ええ。強靭な肉体、心…その他もろもろです。まぁ、あなたならなれるでしょうがね」

「まさか…」

「ええ。組織の幹部が集まるときに飲み物に混ぜて出してみたのですよ。生き残ったのが私とボスです」

「……」

「まぁ、他の幹部は、薬の効果に耐え切れなくて死んでしまいましたがね。彼らの自由への想いはその程度なんですよ」

「…お前、頭がおかしくなっているのか?」

「いいえ。私は正常です。薬の効果で細胞の新陳代謝、それは永遠に繰り返され、常人より優れた運動能力、私は無敵だ」

「……狂っているな」


則和は、先ほどのように、キラに突っ込んで行った。
走っている途中で、銃弾を二発、キラに撃ち込む。


「甘い!」


キラはナイフで弾き、走り出そうとする。
一歩、足を踏み出す、その時…。
ドンッと則和が、銃弾をもう一発、発砲した。
その銃弾は、キラの足に命中した。


「ぎゃぁあ!」

「……これでお前の足は封じた…」

「な、かなかやりますねぇ!ですが、私の風は足だけじゃない!」


キラの投げたナイフが、何時の間にか則和の左肩に突き刺さった。
そのナイフの勢いは、すさまじく、則和ごと壁に突き刺さった。
貼り付け状態になる則和。


「はぁはぁ…流石にこの怪我は治るのに時間が掛かりそうですね…」

「ぐ…ぁぁっ…」

「痛いですか?それにしても、すごい血ですね。そろそろ出血多量でやばい感じですね」

「……」


キラの言うとおり、則和の意識は朦朧としていた。
腹部と肩からの出血のせいで身体も動かなくなっていた。


「動けないみたいですね。なら、最後に冥土の土産をあげますよ」

「な…に?」

「あなたのご両親がどうして死んだかですよ」

「……」

「別にどうでもよかったんですよ。ただ、ボスの気まぐれですね。彼の自由の生贄です。別に誰でもよかったんですよ」

「……」

「そう、あなたが類まれなる、常人離れした頭脳、運動能力をしていたから。だから、ご両親はしんだんです」

「…お…の…せい?」

「ええ、大きく言えば、そうですね」

「……」

「確かに、あなたは私を凌ぐ力を持っているでしょうが、不老不死でも自由を求める意志も弱い。それが差です」

「……」

「さ、早く死になさい」

「こ…れから…お前はどうする気だ?」

「さぁ…決めてません。どうしましょう?…あぁ、あなたが気に入っていた女でも犯しに行きましょうか」

「…っ」

「そして、殺して…あなたの周りにいた人たちを殺しましょう。そう、殺して殺して…」


則和は、何も言わなかった。
だが、彼の頭の中では…何かが切れた音がした気がした。
何も言わず、彼は突き刺さったナイフを抜き取る。
身体が自由になり、前に倒れる。


「まだ、そんな余力があるんですか…まぁ、もう虫の息ですね」

「…せない…」

「なんですか?倒れて何か言っても聞こえませんよ」

「ころ…させない…」


則和は立ち上がり…銃をキラに向ける。
キラはふぅ…と溜息を吐いた。


「まだ、やるんですか?もう、あなたは私に勝てませんよ」

「…黙れ」

「じゃあ、人想いに殺してあげますよ!」


キラは気づいていなかった。
則和が、先ほどと違う雰囲気になったことを。
瞳は澄んでいた…というよりも冷たい、ロボットのような目になっていた。
顔も無表情だった。


「キェェェ!!」


ドカッという音がした、則和がキラを蹴飛ばしたのだ。
則和は手を緩めなかった。


「ぐぅ…」


瞬時に近づいて、キラの身体に圧し掛かる。
そして、銃を何発も何発も発砲した。
頭、心臓、首…あらゆる致命傷になる部分を撃ちまくった。


「や…ぎゃぁぁぁ!?」


キラは絶命した。


続く


後書き


名前が出てきたときに、敵キャラ死ぬ…。
かわいそう(汗
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