心踊り出すような生き方を
第10話


By KEN






「いってきま〜す」

「二人とも、いってらっしゃい」


美奈と則和は何時ものように学校へと向かった。
二人とも、昨日のことは何も言わなかった。
もちろん、二人と言ったので、美奈は誰にも言わなかった。
彼女は則和が何をしたかを誰かに喋れば、きっと彼はいなくなる…と、わかっているのだ。


「あら、望月君」

「那珂沢か…」


道を曲がると、二人は詠子とばったり出くわした。


「あなたが…美神さん?」

「え、えぇ…」

「あたしは那珂沢 詠子。望月君のクラスメイトよ」

「そうなんですか。…あ、でも、どうして私の名前を?」

「もともと知ってたのよ、それに望月君に聞いたの」


美奈は納得した。
自分たちが、結構上級生のクラスに行ってたことを今更ながら思い出した。


「それにしても、仲良さそうね、二人とも」

「え…そ、そんなんじゃ…」


美奈は真っ赤になってあわてる。
その間、則和は詠子のほうを見ていた。
しばらくすると、チッとしたうちをして一人で学校へ行ってしまった。


「あ…どうしたんだろう?」


美奈は呆然と則和の背中を見ていた。
詠子はクスッと笑って言う。


「きっと、あたしにあなたを盗られたことに嫉妬してたんじゃない?」

「え、そ、そんなことないですよ」


美奈は真っ赤になって否定する。


「そうなってくれると…嬉しいけど…」

「うふふ…きっと、あなたの事が好きよ、彼」






























「しくじったのね…珍しい」

「…美奈がナイフ使いにつかまったからな」

「彼らは勘付いてどこかに雲隠れしたわ」

「だろうな…」


則和は悔しそうな顔をする。


「彼らは手下が死ぬごとに住処をかえる」

「知ってる…だからこそ、情報が欲しいんだ。手下に聞き出しても、もう、いない」

「そうね…また、情報が入ったら伝えるわ」

「…珍しく、親切だな」

「まぁ、こんな情報、あなたくらいしかいらないからね。それに、高値ですし」

「そうだな」


則和は空を見た。
空は、青く、ほんとに真っ青だった。
雲一つないとはこの事だ。


「ねぇ、あなたは何時から追いかけているの?」

「…物心ついた時」

「そ…私怨…よね」

「そうだな。…だけど、最近、どうでもよくなってきているのかもしれない」

「…時間って風で私怨が風化してきた?」

「ああ。…だが、生きる目的が欲しいんだ。だから、人を殺して、あいつ等を追うんだ…」

「虚しいわね」

「だな…お前はどうなんだ?」

「あたし?…ま、あたしもあいつ等に恨みがないって事はないけど…はぁ…自分じゃ手に負えないからね」

「そうか…」

「だから、あなたに殺ってもらおうとしているのかもね…」

「……」





























































「まだ…見つからないのか?」

「スマナイ…奴等は隠れるのが上手いからな」


その日の夜、則和は和利の部屋に来ていた。
バンッと則和は大きな机を叩いた。


「焦るのは分かる。私も奴等は目の上のたんこぶだからな」

「……」

「…そう言えば、美奈とは仲良くやってくれているかい?」

「…多分な」

「そうか。…できるだけ、泣かさないでくれよ。あいつは君の事が好きみたいだからな」

「……俺は、そう言う事には疎いからな。対処なんてできん」

「ははは、そうか」

「今日は、もういい。部屋に戻る」

「あぁ。おやすみ」


則和は、和利の部屋から出て行った。
その様子を和利は、少し溜息を吐きながら見ていた。












「ふぅ…」


軽く息を吐く。
そして、机の上に置いてあるノート型のPCを起動させる。
しばらくすると、何人かの顔写真が画面に写る。
それを、和利は睨むように見つめた。


「…これを、彼に見せたら…いけないな」


彼がそう言った時、ドアがノックされた。
慌てて、PCの電源を切る。
そして、ドアの方へ向かう。
ドアを開けると、美奈が少し神妙な面持ちをしていた。


「どうしたんだ?」

「うん…ちょっと、話しがしたくて」

「…そうか。入りなさい」


美奈は部屋の中に入っていく。
そして、少し重苦しい雰囲気が漂う。
美奈は部屋にある、小さなソファーに腰掛ける。
和利も美奈の向かい側のソファーに座る。


「お父さんは…もし、好きな人の重大な秘密を知ったらどうする?」

「ん…まぁ、誰にも言わないだろうな」

「悪い事でも?…もっと、深く知りたい?」

「まぁ…人ならそういう事はあるが…やっぱり、最後は自分の判断だ」

「そう…だね」

「……そうだ」

「…うん、ありがと。…戻るね」

「ああ」


美奈はそう言うと、部屋から出て行く。
出て行くときに、和利は…。


「…最後に一つ、…信じる事も、支えてあげようと言う事も大切だ」

「…うん」






























「…やはり、駄目か」


則和は、昨日、詠子に教えられた彼のターゲットの住処にいた。
だが、そこには誰もいなかった。
慌てて逃げ出した形跡があるが、何処に行ったかは、分からないようになっていた。


「ふぅ…」

『残念だね、坊主』


後ろを振り向くと、半透明の男の姿が現れた。
どうやら、ホログラムのようだ。
則和はその男を睨みつける。


「……っ、ここの幹部か?」

『ああ。まぁ、君が見ているのは私の幻影だがね』

「……」

『君が以前から私たちの事を狙っているのは分かっている。だから、良い事を教えてあげよう』

「……」

『君が殺したいと願っている人物はもう、半分以下になっているんだよ』

「何…どういう事だ?」

『まぁ、我々の組織にも、意見の食い違いってものがあってね。邪魔な奴等は死んでもらったんだよ』

「……」

『ふふふ…時期に私達と君は決着をつけるときが来るだろう。それまで、待っててくれよ』

「…それは、何時だ?」

『何…それは、近日だよ。ほら、Coming Soonだ』

「…何故、今?」

『機が熟したからだよ』

「…?」

『その時になれば、分かることだ』


男の姿は消えた。
残ったのは、一人の死神だけだった。


続く


後書き


やっと、終盤に近づいてきました。
あと、ちょっと…。
がんばろう!
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