心踊り出すような生き方を 佳奈子編 By KEN
「はぁ・・・」 不意に溜め息が漏れる私。 原因は、なんなのだろうか・・・? きっと、この季節・・・。 冬の到来の所為だろう。 「どうしたんだ、菊月?」 「あぁ・・・なんでもないわよ」 私を心配してくれる幼馴染。 優しそうな声に安心感が生まれる。 「ただ・・・この時期になると思い出すのよ」 「・・・佳奈子・・・」 私がこの話を幼馴染に言うと、彼は私を名前で呼ぶ。 何時からだろう? お互いの呼び方が変わったのは? 雅史から神無月へ・・・。 私は佳奈子から菊月へ・・・。 何時の間にか下の名前から上の名前で呼び合うようになっていた。 少しお互いに距離を感じるようになった。 「まだ・・・吹っ切れない?」 「あはは・・・馬鹿だよね」 少し苦笑しながら雅史に言う。 自分でも未練たらたらなのは分かっている。 別に失恋ではない。 ある良いこれも恋心と言えばそうかもしれない。 もういない人だと分かっているのに・・・。 「たださ・・・アイツがいればもっと楽しかったろうな・・・って」 「・・・そうだね」 私はもう一度フゥッと溜め息をついてから立ち上った。 何となく年寄りに見える。 「帰ろっか?」 「そうだね」 無理矢理笑顔をつくって言う。 私と雅史は誰もいない学校の教室を後にする。 「そう言えばさ・・・」 「何?」 夕日が私達を包む。 温かな光に包まれながら通学路を歩いている。 「今年の冬休みはどうする?」 「ん・・・迷ってる」 毎年、冬休みにには旅に出掛ける。 まぁ、旅と言うほど大それたものじゃないけど、私はそう呼んでいる。 「僕は菊月が行きたければ一緒に行くよ」 「そうね・・・神無月が私をデートに誘えるのはこの時期しかないものね」 「別に・・・そんな訳じゃあ・・・」 少しからかってみる。 雅史は顔を赤くしていた。 何時まで経っても初な奴だ。 「嘘よ。すっごく神無月の事頼りにしてるわ」 「もうっ・・・」 少し拗ねた。 少し可愛いと思うのは内緒だ。 「でも、お互いの親が放任主義でよかったわね」 「そうだね・・・。で、今度は何処?」 「ん・・・今回はちょっちお休みすっか!」 「え?・・・いいの?」 「うん、もしかしたらアイツから帰ってくるかもよ?」 「・・・そうだね」 そうだ・・・そうなんだ。 毎年毎年、雅史に負担をかけさしては駄目だし、たまには待つ側になるのもいいかもしれない。 「まぁ・・・気長に待ちましょや」 「・・・うん、そうだね」 もうすぐ冬休み。 何をするかはその時に考え様。 私には、とても大きな傷と後悔がある。 それは・・・私のもう一人の幼馴染の事だ。 もう顔もおぼえていないけど、きっともう一人いたのだ。 何でも出来て、とても頼り甲斐のある奴。 新しい事を見たり知ったりやったりするのはその子から。 私と雅史はその子の背を追いかける。 それが、とても楽しかったし、嬉しかった。 だけど、その子だって完璧ではなかった。 私と雅史と同じように一人の子どもだった。 どんなに早く自転車に乗れるようになっても、どんなに早く泳げるようになっても人間だ。 普通の人間なんだ。 何故、そう思ったかと言うと、その子が荒れたからだ。 私は何故その当時荒れたか分からなかった。 後から知ったのだが、その子は両親とうまくいってなかったのだ。 その時、私と雅史は冷たい態度をその子にしてしまった。 どんなにその子が苦しんだのだろう? 私には想像がつかなかった・・・。 今となっては、それは大きな後悔だ。 小学生の低学年だったからだと言って、私は好きな人を支えてあげられなかった。 もし、その子を支えてあげられれば私の傍からいなくなるかもしれないと言う苛立ち。 気づいた時はその子に謝りたかった。 だけど、その子は私の前から姿を消していた。 生きているのか死んでいるのかも分からない。 それっきり、私の心は凍ってしまった。 表面では成長しているフリをして、内面は小学生の頃と変わっていない。 今じゃあ表面の心もおかしくなりかけている。 「ねぇ、佳奈子・・・。もう諦めよう」 前に雅史がそう言った。 泣きそうな表情・・・弱々しい声。 私は、苛立ちと怒りを露にした。 激しく、狂ったように・・・。 最後に雅史はこう言った。 「僕じゃあ・・・則の代わりにはなれないの?」 私はどうすればいいのか分からなかった。 苛立ちと怒りは、一瞬にして消えてしまった。 次に出てきたのは消沈した心と、後悔・・・。 雅史にまで迷惑をかけて・・・。 とても、心が辛くなる。 楽になりたいと言う本心はあるんだ。 だけど、駄目なんだ。 私の心は凍ったままだ。 だから・・・雅史の気持ちに応えるためにはその子の事を解決しないといけないんだ。 私の心はその子に傾いているのだから・・・。 そう、望月 則和に・・・。 To be continued 後書き 完璧な補完を目指そうと思っての外伝です。 佳奈子編、雅史編、そして・・・則和編を書きたいと思います。 そんなに長くなるとは思いませんが、ハッピーとなるかは分かりません。 まぁ、今作品はサイド的で本編設定のちぐはぐをカバー出来るようにするものですしね(笑 では・・・
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