心踊り出すような生き方を
April Fool
By KEN
則和さんと出会って、5ヶ月くらい・・・。
その間に私達はいろんな事をしてきた。
笑ったり、怒ったり、喧嘩したり・・・。
それに、お、同じ夜を過ごしたのも二度くらいある・・・。
何だかすっごい、幸せな日々を毎日送っていると思う。
だけど、少し残念なのが、則和さんがあまり喋ってくれない事。
我侭だけど、私はもっと触れて欲しいし、何か話し掛けてほしい・・・。
そして、私に何か甘いコトバを言って欲しい・・・。
私を安心させるような蕩けるような甘い甘いコトバを・・・。
「好き」の一言でいい・・・。
特別な日に言われる「好き」ってコトバはとても嬉しかった。
でも、普通の日・・・。
何ていうか、なんでもない日にはそーいうコトバは聞いた事がなかった・・・。
だから・・・今日は・・・。
コンコン・・・。
今日は少し大胆にする。
返事を待たずにドアを開ける・・・。
少し作戦を考えている・・・。
今日は、4月1日エイプリルフールだ・・・。
だから、嘘を言ってもいいし、それを武器にしてもいい・・・。
よぉ〜し・・・。
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今日はお父さんとお母さんが出掛けていない。
お母さんが多分、そう仕組んだんだと思う。
多分、私が何かを計画しているかも知っている。
それに、誰かがいればきっと則和さんは本音を言ってくれないと思う。
則和さんは大切なコトバを送るときは絶対に私と二人きりの時だけ・・・。
それが、少し嬉しい・・・。
今日の作戦はこうだ・・・。
『あ、あの・・・則和さん』
『なんだ・・・?』
『もう・・・駄目です・・・』
『・・・?』
ここで、顔を下に向けておいた方がいいだろう。
気づかれないように涙を流してもいいかもしれない・・・。
『私・・・則和さんの気持ちが分からなくなっちゃって・・・』
『・・・・・・』
『好きって言ってくれない人じゃなきゃ、一緒にいたくないし、家にもいてほしくない』
『・・・分かったよ。コトバで解決するならいくらでも言ってやる・・・だから、俺をキライにならないでくれ・・・』
『則和さん・・・』
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完璧だと・・・思う。
さぁ、いざ則和さんの部屋の中へ・・・。
「あ、あの・・・則和さん!」
多分・・・いいスタートをきったと思う。
・・・と、思ったけど・・・。
「・・・いない」
いきなり予定が狂ってしまった・・・。
一体何処にいったんだろう?
「はぁ・・・いきなり失敗・・・」
「何が失敗なんだ?」
「え、きゃ!・・・の、則和さん!」
「・・・よう」
則和さんが何時の間にか私の後ろにいた。
一体何処にいたんだろう?
「何処行ってたんですか?」
「・・・風呂」
「・・・なるほど」
よく見れば髪の毛が少し濡れていた。
首にタオルもかけている。
パジャマも着ていた・・・。
実際、よく見ればすぐにわかった・・・。
「で、なんのようだ?」
「え、えっと・・・」
「言っておくが、一緒には寝ない」
「え?」
「違うのか?ホラー番組見て夜寝れなくなったんじゃないのか?」
「そ、それはこの前の話です!」
先日の光景が思い出される。
うぅ・・・恥ずかしい。
「じゃあ、なんだ?君恵さん達がいなくて寂しいとかか?」
「ち、違います!一緒に寝ようって言ってません」
「・・・違うのか。・・・じゃあ、何のようだ?宿題も手伝わないぞ」
「そ、それはまた今度で・・・あ、あの!」
「ん・・・」
「あの・・・則和さん、もう・・・駄目なんです・・・」
少し俯いて小さく言う。
少し寂しそうに。
うまくいっているかしら?
「・・・何がだ?」
「則和さんの気持ちが分からなくなっちゃって・・・」
「・・・・・・」
「好きって・・・言われないし、気持ちが分からなくなって・・・だから、私、もう一緒にはいられない」
私、凄い名演技!
と、思った・・・。
「・・・そうだな」
「え?」
思わぬ返答が出たので私は戸惑ってしまった・・・。
おかしいなぁ・・・。
「俺も同じ事を言おうと思った。俺は、所詮裏の人間だ。そして、一緒にいられる自信がない」
「え・・・」
「明日には出て行こうと思ってな。お互い、元の生活に戻ろう・・・」
「ええ!?」
「何を、驚いているんだ?お前もそれを望んだんだろ?」
あれ・・・どうしてだろ?
甘いコトバが返ってくるはずだったのに・・・。
なのに、なんでこんなに私を締め付けるコトバばかりなんだろう?
「の、則和さん・・・?」
一瞬、意識が遠くに行ってしまっていた・・・。
そうしているうちに、則和さんがクローゼットのドアを開けて着替えていた・・・。
「美奈には悪いだろうから・・・今日出て行くよ・・・。さようなら、美奈」
少し悲しそうな目で私の横を通り過ぎていく。
元々、物の少ない部屋で衣服も当然少ないから大き目のバッグに全ておさまる。
・・・駄目、行かないで・・・。
お願い・・・行かないで・・・。
「待って!」
廊下に出て急いで則和さんの背中に抱き着く。
少しでも引き止めておけるように・・・。
「さっき言ったのは、私、則和さんの気持ちが知りたくて・・・だから、だから・・・何処にも行かないで・・・」
思わず涙が零れてしまった。
あぁ、嫌だな・・・また迷惑かけてる。
涙を止めたいのに、則和さんの服が濡れちゃう・・・。
「美奈・・・離れてくれ・・・」
「!!」
あぁ、もう駄目だ・・・。
なんでだろう・・・?
あんな事、言わなければ・・・。
「美奈・・・」
そう言われて則和さんから手を離した・・・。
・・・・・・。
「嘘だ」
「・・・え・・・?」
そう言われて、そっと私を抱きしめた・・・。
ごめんなさい・・・また涙が出ちゃう・・・。
「あ・・・う・・・」
「お前が考えてる事なんて簡単だかなら。何時、嘘を言ってくるか待ち遠しかったぞ」
「うぅ・・・」
則和さんの腕の中で唸る。
「・・・コトバか・・・」
「・・・・・・」
私もきゅっと則和さんの背中に手をまわす。
少し待ち遠しかった・・・。
私ってゲンキンな子・・・。
「美奈・・・・・・」
「・・・はい」
そっと、私の耳に顔を近づけ、そっと呟いた・・・。
あぁ・・・今更だけど、すっごく恥ずかしくなった・・・。
「うぅ・・・」
「なんだ、嫌だったのか・・・」
「・・・嬉しすぎて・・・」
「・・・そっか」
そう言うと、私の髪の毛を撫ではじめる。
温かい・・・。
人に・・・好きな人に触れられると嬉しい・・・、気持ちいい・・・。
「んじゃ・・・そろそろ寝るぞ」
「え・・・きゃ!」
そう言われると、いきなり私の身体が持ち上がった。
「・・・軽いな・・・」
「・・・うぅ・・・」
「さてと、美奈の我侭に付き合ったし・・・今度は俺のだからな・・・」
「え、えぇ・・・!?」
「言っておくが、一切の反論は許さない」
「うぅ・・・」
私は赤い顔になりながら、則和さんの部屋に戻っていった・・・。
そこで、何をしていたかは・・・内緒だ。
Fin
後書き
あるSSの刺激を受けて・・・(汗
まぁ、電波です。